デジタル人材の育成
学び続けている実践者の方からお話を伺いました。
ご自身の組織や個人としての学びのご参考になれば幸いです。
高柳謙 氏
<経歴>
クラスメソッド 株式会社 CX事業本部 MAD事業部 内製化支援チーム 内製化支援コーチ
システム開発のテスターからプログラマーを経て、公共系システムにSIerとして10年携わる。2012年にソーシャルゲーム企業で研修担当として転職。ファシリテーションを用いたエンジニア向け研修を実施。2015年4月より独立し、研修内製化の支援、顧問ファシリテーターを企業向けに展開。現在は企業で内製化支援コーチとしてチームが主体性を持った活動ができるよう「対話」を重視したアプローチで支援を行っている。社外ではファシリテーターとしていろんな人々とコラボレーションで創り出す場の支援をしている。
認定スクラムマスター(CSM)/ LEGO®SERIOUS PLAY®メソッドと教材活用トレーニング修了認定ファシリテーター / Management 3.0 修了認定ファシリテーター
目に映るものに興味を持ちなさい、考えてみなさいと伝えます。私はあまり自分から学ぶものを見つけにいくタイプではないので、まずは目に入ったものや人から勧められたものを受け入れるようにしています。そういったことを通じて自分の視点と違うものに触れ、多くのものを学ぶこともできるようになりました。
学びのスタイルは人それぞれで、自分の性格に一致した学び方があると思います。私の場合は、本よりも人から直接学ぶことが多いです。なぜなら、文字だとその人の真意が分かりにくく自分のフィルターでどうとでも読み取れてしまいます。本を読んでも、それを説明してくれる人がいないと、正しく理解できない気がするのです。そのため、私の場合はワークショップのような人から学ぶやり方のほうが学びに繋がっていると感じます。ある意味正しく理解しようとしているから、私はワークショップに参加しているのかもしれません。
私が考えた答えに対して、「間違っている」と言われるのは嫌だと感じます。我々の時代は何事も正解を教えられてきました。「何事にも正解がある」というのは、教育で植え付けられた思い込みであり、これが学びの阻害要因になっているかもしれません。社会に出ると、正解がない世界なので生きやすいと私は感じています。何を言っても間違いではなく人それぞれ考え方や過程が違うだけと考えています。
何かしら思考するには、考えるための要素、原資が必要なので、幼稚園や小学校のような時期は知識のインプットが大事だと考えています。一方、大人になるとインプットした知識を使うことも重要となり、バランスが大事になってきます。使う部分は自分で思考しないといけません。インプットする部分と使う部分、両方回っていなければ効果が薄いものとなってしまいます。
また、テーマを得られたときにはじめて人は思考します。そのため、知識を使う上でテーマも必要になります。テーマは社会問題や介護などなんでも構いません。日々テーマを見つけることが大事です。
新しいものを学ぶのは、元々知らないことなので楽だと考えています。しかし、様々な知識をインプットして考え、自分なりのオリジナル(例えば、オリジナルのコーチング)が出来上がってくると、オリジナルのものとそうでないものの境界線を明確化するための学びになってきます。学びはインプットするイメージが強いですが、全部を受け入れるのではなく、違うと思ったところを明確にすることも学びです。学ぶことによる自分の学びの変質といえます。
また、その人がたどり着いたオリジナルのものが、すでに世の中に存在する可能性は高いです。しかし、その人が自ら学びを考え、それにたどり着いたということが大事なのです。
それぞれ別の観点で考えています。趣味は目的志向ではありません。なので、何が目的でどう使うのかということを考える必要がありません。一方、仕事は達成すべき目的があるので、それに対して何をすべきなのかというのが分かりやすく、学んだことを使う・使わないが明確になりやすいです。使う・使わないどちらにしても学びではありますが、使えるほうが良い学びだと判断しています。よって、趣味は自分から好き勝手に学べるもの、仕事は必要なものとして学ぶものと考えています。
自分で学ぶものを選ぶための仕組みを作ります。社員から、現場で使えるものではないから学ばないという声があがることがありますが、それは自分で学ぶものを選んでいないのが要因の1つです。企業から無理に与えられたものは学びたくなくなってしまうので、学びたいものをそのまま学べるような環境を提供します。そして、そこで学んだものを現場で使ったという感覚があれば、学んでよかったという考えになります。また、学び始めると、学ぶ内容が違ったかもしれない、次はこれを学ぼう、などの次の学びに繋がる思考が生まれます。そうすることで初めて学びの道ができます。
学びたいものを見つけてもらうためには、企業と社員のお互いの考えをすり合わせることが必要であり、学びたい、学んでもいいかもという考えになってもらうことが大事です。企業として、仕事やキャリアなどのテーマ性を持って、社員に一旦自分の周りについて考えさせます。その中で気になったものは何か問いかけ、何が優先になりそうなのか、面白そうなのかなどを話し合います。企業が自分を見てくれているという思いが学びに繋がります。
「教えない教育」という方法があります。この教育法は、正解を与えるのではなく、自分で考えて答えにたどりつける力を育てるというものです。ここではまず、テーマ設定をします。知識に関して教えることはしません。例えば、『システム開発におけるデータベース』をテーマとした場合、データベースがどんなものなのか、講師が教えなくても世の中にはたくさんの情報が、ネットや本などいろんなところにあります。それらを使って、どう学びを構築するか自分で考えさせることが教えない教育になります。例えば、本を読むのが苦手なら、読んだ人から学ぶというようなことを考えます。何をしたら到達できるのか、学習方法を自分たちで考えさせます。ただ、その間には分からないことへの不安がでてくることがあるので、メンターを付けたり、その人の気持ちのフォローをしたり、承認する仕組みは必要です。
これを実践してみた結果、自分で考えられるようになり、仕事でやり方まで指示されなくてもできるようになっていきます。しかし、効率性という点では優れているとは言えないので、他の手段との使い分けが必要です。
既にそこにあるものだと考えています。それをどう見つけるか、見つけ方は人それぞれだと思います。見つけたものしか学びになりません。情報を認知した瞬間に何か得るものがあり、認知した瞬間に学びになっています。体系立てて理解するのも学びだと思いますが、自分の中に根付く、入ってくるものは全部学びになります。何からでも学ぶことができ、見た瞬間から学びになりうるということを普段から考えています。