デジタル人材の育成

コラム:DX推進におけるサービスデザインの重要性

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今回のDSSにおいて、人材類型「デザイナー」におけるロールの一つである「サービスデザイナー」という、ひょっとしたらあまり耳馴染みがない名称が登場している。本コラムでは、サービスデザイナーという役割が生まれてきた背景と、その重要性について紹介しよう。

サービスデザインとは、端的に述べると「顧客にとって望ましい連続的な『体験』を提供するための仕組みとして『サービス』を構想し、実現するための方法論」である。

サービスデザインの概念自体は1980年代から存在していたが、2005年頃から「デザイン思考」がビジネスで注目されていくことで一般化していった。また2010年以降、社会のデジタル化が急速に進み、それに伴いさまざまな産業がサービス化していくなかで、あらためてその重要性が認識されている。

また、ビジネス分野だけでなく、公共サービスなどの行政の取り組みにおいてもサービスデザインのアプローチは用いられている(欧州ではサービスデザインの事例の半数は公共サービス事例となっている)。

サービスデザインは、特徴として「利用者(ユーザー)視点」、「包括的」、そして「共創型」といったキーワードで形容される。

「利用者視点」は、もっともわかりやすいだろう。DX全般において、それは顧客であれ組織内であれ、「利用者」は常に存在している。この、利用者の感じる価値、そして利用文脈に則することは施策の有効性、および実効性のためには欠かせない視点となる。要は「役に立つ」のかどうかは利用者視点に立っているかどうかにかかっている。

また、「包括的」に考えることも重要な論点となる。既存のビジネスや商慣習の常識をいちど捨てて、事業にかかわる仕組み全体から考えることで抜本的な改革を導くことができる。これは例えば、AirbnbやUberが、既存のホテル事業、タクシー事業という視点から脱却したことで生み出されたことからも理解できるだろう。

そして「共創型」は、ここまでの「ユーザー視点」「包括的」といった観点でサービスを検討することを考えた場合、組織横断的に、加えてユーザーを巻き込んで進めていかねばならないことは理解できるだろう。

さて、ではどうしてサービスデザインが重要となるであろうか。それは、サービスデザインのアプローチで得られるサービスとは、DXにおいて「なにをすべきか」を示すものとなるからである。実装部分を担当するUXデザイン、UIデザインは、構想を実現する段においては、欠かせないものである。

一般に、UXデザイン、UIデザインをすぐに始めてしまうと、それは既存の課題の解決を行うことしかできない。もちろんそれはそれで重要であるため全く無意味でないが、組織においてDX推進を行うことを考えた場合、そこにはあたらしいインパクトが求められている。

サービスデザインのアプローチは既存の問題解決を超えて、イノベーションを生み出すためには欠かせないものとなるのである。

執筆者:デザイナーワーキンググループ主査 長谷川敦士

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