デジタル人材の育成
量子コンピュータは古典コンピュータでは実行不可能な計算ができることが期待されている。しかしノイズが存在することで、量子計算を正確に行うことが非常に困難になってしまう。これを解決する方法としては、量子ビットを冗長に表現し小さい誤り確率での計算を可能にする「量子誤り訂正」と呼ばれる手法が存在するものの、現存のNISQ(Noisy Intermediate-Scale Quantum)デバイスでは実現困難とされている。
そのため本プロジェクトでは、特定のNISQデバイス・特定の量子回路に対する、機械学習を用いた統計的な誤り補償手法の開発を行う。具体的には、量子カーネル推定法・変分量子固有値法といった代表的なNISQ向けアルゴリズムで用いられる量子回路を対象とし、得られた計算結果のエラーを低減する機械学習モデルの構築に取り組む。また実際に実機を用いてエラーが軽減されるかの実験検証も行う。この手法を用いることで、NISQアルゴリズムの性能向上に貢献することを目指す。
まだ規模がそれほど大きくなく誤り訂正符合が有効に活用できないNISQと呼ばれる量子コンピュータにおいて、符号のように量子ビットを増やさないで量子エラーを抑制するという重要な課題について機械学習を用いた新しい手法を構築しようとしており、未踏性は高い。検討するべき課題は多くありそうだが、それも含めてプロジェクトの遂行が楽しみである。若手でもあり、教育上の意義も高い。