デジタル人材の育成

未踏IT人材発掘・育成事業:2020年度採択プロジェクト概要(菅野楓PJ)

1.担当プロジェクトマネージャー

  • 首藤 一幸(東京工業大学 情報理工学院 准教授)

2.採択者氏名

  • 菅野 楓(早稲田実業学校 高等部)

3.採択金額

  • 2,736,000円

4.テーマ名

  • パックツアーコンサルティングシステム

5.関連Webサイト

  • なし

6.申請テーマ概要

2018年の日本人海外旅行者数は前年比6.0%増の1895万4031人と過去最高となった。観光庁の「旅行・観光産業の経済効果に関する調査研究(2018年)」によれば、2016年の日本人の観光消費額の内訳は、国内宿泊旅行は16兆円、国内日帰り旅行4.9兆円、海外旅行の国内消費分が1.3兆円、訪日外国人市場が3.6兆円で、総額は25.8兆円にのぼる。観光消費がもたらす生産波及効果は53.8兆円、このうちの付加価値効果は26.7兆円、雇用効果は459万人と、これはGDPの5.0%、就業者総数の6.9%に相当し、いまや旅行・観光産業は日本の主要産業のひとつである。
では日本人はどのような旅行をしているのだろうか。主要旅行業者の取扱高の内訳をみると、海外旅行、国内旅行とも募集型企画旅行が半分以上を占めている。募集型企画旅行、いわゆるパックツアーは、旅行業者が一般の人から参加者を募り、運送・宿泊・観光の料金を一括して集めておこなう団体旅行のことだ。コースがあらかじめ決まっていて、押付がましいイメージもあるが、メリットも多く、英語の不得手な日本人が便利に利用している。
割安で便利なパックツアーだが、その一方で大きな問題もある。ツアー内容の表示方法が各社まちまちで統一した基準が存在せず、「移動時間は何時間なのか」「何ヶ所の観光地をまわるのか」「活動時間は何時間あるのか」「ホテルのランクはどの程度か」「食事はついているのか」などといった旅の基本要素を比べることさえ難しく、どのツアーが自分に最適なのか判断することができない。旅行者は、せっかく大金を払うのだから、できるだけよいツアーを選びたいはずだが、星の数ほどある選択肢から、自分に最適なものを選ぶのは至難の技である。かなり旅慣れた人でさえ、パックツアーの良し悪しを判断するのは相当に骨の折れる作業だ。
本プロジェクトでは、旅行者のこうした不安を取り除き、損しないお得な旅を推薦するシステムを開発する。本システムは、地域ごとに訪問すべき観光地を明らかにし、旅の要素情報を抽出して客観的な統一基準で比較し、最もコストパフォーマンスに優れたパックツアーを決定する。あくまでも旅行者目線で、いままでのガイドブックが教えてくれなかった「パックツアーの選び方と歩き方」を提供する。

7.採択理由

パックの海外ツアーには様々なメリットがある一方、選ぶこと、比較することは難しい。移動時間を除いた観光時間、観光は入場までするのか車窓からなのか、自由時間に施設が開いているか、食事の有無、などなど、ときに素人には気付きにくい多くの考慮すべき事柄がある。しかし、パンフレットでの表示方法は業者によって様々で、比較はおろか、把握するだけでも困難である。こうした、パッケージツアーの品質に関わる事項を容易に比較できるサービスを開発する。
ありそうでなかった、需要のあるテーマである。同様の課題がある業界は他にもあるので、他にも応用の効く、波及先の広い技術・サービスを生んで欲しい。