デジタル人材の育成
首藤 一幸(東京工業大学 情報理工学院 准教授)
ゲームの分野でのみ使われてきたリアルタイムな3DCG技術が、一般向けの広報・宣伝にも活用され始めている。インターネット回線の速度向上とモバイル端末の高性能化を背景に、3DCGは文字、画像、動画に次ぐ新しい表現技術として確立されつつある。
一方でHTML5技術である「Web3D」についてはGoogleやFacebookなどグローバル企業以外は大企業ですら活用できていない現状がある。なぜなら、リアルタイム3Dを扱うアプリケーションを簡単に開発できるUnityなどの開発環境は、ゲーム開発に特化して進化してきた結果、ウェブの文化や開発フローに適応できなくなった。仮にWeb3Dを独自で一からサービスに組み込むため開発するとしても、多くの3D数学、及びこれまで長い間リアルタイムグラフィックス技術の分野で培われた難しいアルゴリズムが必要になる。
本プロジェクトでは、Web3Dが真の意味でその力を発揮するために、Webエンジニアが従来の知識の延長線上でWebサービスのフローと融合した3D開発を行えるようにするライブラリを開発する。本ライブラリにより、新たな表現や差別化の手段として、誰もが自由に3DCGを選択できる未来が期待される。Webでの3D表現が当たり前になる近い未来において、本ライブラリはコンテンツ産業の活きる道を広げる基幹技術となりうる。
本ライブラリのレンダラのコア部分は本プロジェクト開始までにほぼ完成している。本プロジェクトでは、Web3Dに求められるライブラリとは何かを考え実装していくとともに、本ライブラリがオープンソースソフトウェアとして新たな開発者、ユーザを増やすための機能も追求していく。
ウェブデザイナ・エンジニアが、3Dを、当たり前の表現の道具として、ウェブの流儀で扱えるようにするライブラリやツールを開発する提案である。オープンソースソフトウェアとして利用者や開発者をつかむことも重視する。
開発開始から1年、プロジェクトの狙いや可能性、またそれを推進するクリエータの情熱が見えてきた。ソフトウェアとしていいものを作っていくだろうことは疑っていない。その先を楽しみにしている。