デジタル人材の育成
石黒 浩
チーフクリエータ
土田 修平(神戸大学大学院 工学研究科 電気電子工学専攻)
コクリエータ
友近 圭汰(神戸大学 工学部 機械工学科)
本プロジェクトでは、ストリートダンスなどの激しいダンスに追従できる自走ロボットを利用した新しいストリートダンスジャンルの確立を目的とし、そのためのストリートダンスに特化した自走ロボット制御システムを開発する。
本プロジェクトで利用する自走ロボットはSphero2.0を想定する。これは、他の自走ロボットと比較して球体という単純な形が、ロボットの機能的に見える部分を最大限に削ぎ落したものとなっており、単なる移動するオブジェとして楽しめるデザインであることが理由の一つである。ホイールやローラーが剥きだした状態であれば、物体の移動そのものだけでなく、回転する部分にも人間の意識が向いてしまうため、ダンスパフォーマンスとの相性は悪い。ロボットの機能的な部分を隠したSphero2.0はその点においてダンスパフォーマンスでの利用に向いている。また球体自身が移動する様は機構が直観的にわかりにくく、常人にはできない身体動作の連続を魅せるダンサーと同様に、観衆に不思議な感覚を与えられると考えられる。ダンスは内に秘めた力を外に出すイメージがある。ロボットにもそのように内部で動作する力が外部に影響する機構を備えていることがダンスパフォーマンスの利用には望ましい。
さらにストリートダンスにおいては、ダンサーで円形の人垣を作り、その中で己の技術を見せつけ合う、サイファーと呼ばれる楽しみ方がある。このような場合においても球体であるSphero2.0を上手く移動させられれば、例えばダンスの動作の軌跡に、Sphero2.0の移動の軌跡を合わせることで、上方から見て幾何学的な模様を見せるパフォーマンスも可能になる。また、観客の目線近くにおける舞台上でのダンスにおいても同様に、球体がダンサーの足元を横切る、ダンサーの足や手を通るなど、上方から見えるダンスとは違った3次元での動作の拡張を行うことができる。加えてフルカラーLEDを搭載しており、ダンサーの動作やロボットの移動に応じてその状態を変化させ、ダンスの一部として表現することも可能であると考えられる。
提案者らのシステム開発のスキルは高く、システムの製作に対する熱意も非常に強い。また、提案内容の、人間によるダンスとたくさんの球体ロボットのコラボレーションは新しいパフォーマンスを生み出す可能性がある。
ただ、いくつかのタイプのロボットが提案されており、提案内容が煩雑である。球体ロボットのみに絞り混み、徹底した作り込みをするのが望ましい。