デジタル人材の育成
公開日:2024年6月28日
冷凍冷蔵倉庫業界において、近年の電気料金高騰による運用コスト増加は大きな課題であり、クリーンエネルギーへの移行要請も相まって、事業者の経営を圧迫している。さらに、冷凍機の温度設定には統一された制御方法が存在せず、そのことも倉庫の運用にかかる電気料金を上昇させる一因となっている。また、倉庫の老朽化も深刻な課題であり、資金不足から建て替えが進んでいない事業者は、今後廃業を余儀なくされる可能性がある。
このような状況にもかかわらず、日本の「食」を支える冷凍・冷蔵食品の市場は今後も大きく成長し続けていくと見込まれており、日本全国で倉庫の需要の逼迫が起こることが予想されている。
今、2050年にカーボンニュートラルを達成するという目標実現に向けて、再生可能エネルギーを活用したCO2排出量の少ない電力システムの構築が求められている。しかし、太陽光や風力といった自然エネルギーは、需要とは無関係に日照や風況の変化により発電量が変動するため、電力需給バランスに大きな影響を与えかねない。実際、西日本を中心に太陽光発電の余剰電力が昼間に大量発生し、出力制御を行わなければならない事態となっている。このような実例から、再生可能エネルギーの余剰電力を有効活用する動きが加速している。
そこで本プロジェクトでは、冷熱エネルギーを蓄熱しながら冷凍機を自動で最適に制御するシステムを開発する。具体的には、JEPX(日本卸電力取引所)の電力市場価格や倉庫の翌日の入庫量・出庫量・外気温などの情報により、電力市場価格が安価な時間帯に冷凍機を稼働させ、高価な時間帯に稼働を止める市場連動型デマンドレスポンスを行うことで、倉庫の運用にかかる電気料金が最も低くなるような最適制御を可能にする。冷凍冷蔵倉庫をいわば「蓄電池」として機能させることで、電気料金の削減にとどまらず、再生可能エネルギーの余剰電力を有効活用することができ、カーボンニュートラルな電力システムの実現につながると考える。
未踏事業期間中では、「倉庫管理者が、翌日の倉庫の入庫量・出庫量の情報を入力するだけで、自動で翌日の冷凍機の最適な制御アルゴリズムを計算し、制御を行うシステム」のプロトタイプの完成を目指す。
冷凍庫の冷熱を安く蓄熱させることで電力消費を効率化するという面白いアイデア。まだ荒削りだが、未踏アドバンストで支援することでユニークな製品化に貢献できると判断し採択した。
しっかりした想いを持ったチーム。すでに冷凍庫の事業者にアクセスして効果を実証しており、フットワークも軽い。エネルギー効率を高め、電力消費を抑える技術はサステナブル社会に不可欠。若いチームのパワーで未踏的な挑戦を乗り切って欲しい。
2024年6月28日
2024年度採択プロジェクト概要(水野・和泉・穐山・秦PJ)を掲載しました。