デジタル人材の育成
公開日:2024年6月28日
気候変動の影響により、世界の森林では深刻な火災が発生している。火災の被害は、頻度や激しさが増すことで将来的に悪化する可能性が高い。本プロジェクトでは、大規模森林火災の未然防止システムを構築するため、ハイパースペクトル(HS)センサを用いた画像処理システムの開発を行う。最終的には、開発したシステムを衛星に搭載し打ち上げることを想定しているが、未踏事業の期間では、HSイメージング(HSI)ライブラリの構築とそれを活用したリアルタイム処理を開発する。
衛星画像による地球観測には、主に、光学センサと合成開口レーダ(SAR)のようなマイクロ波センサが用いられる。光学センサには、単一バンド、マルチスペクトル、HSの三つがある。HS画像は、観測衛星の打ち上げ計画が進んでいるにも拘らず、バンドの選択や計算コストの大きさから解析が難しく利活用が進んでいない。しかし、波長分解能が高く、空間・時間的情報も多く含むHS画像では、これまで困難だった観測も可能となり、植物の判別や水位の推定など様々な活用方法が考えられる。そこで、本プロジェクトではHS画像処理のためのライブラリを作成する。
ライブラリは、汎用型ライブラリと、特定のユースケースに焦点を当てた特化型ライブラリの2種類を想定している。汎用型ライブラリでは、バンド選択の最適化、フォーマットの異なる画像やプラットフォーム間での連携、可視化や処理の高速化などをサポートすることで、HS画像の利活用推進に寄与する。さらに、解析のハードルを下げることで、宇宙事業でのIT促進やルールメイキングにおけるプレゼンス向上も期待される。リアルタイム処理では、汎用型ライブラリを元に、火災検知に特化したライブラリを作成し、衛星搭載に向けたPoCとしてドローンでの実装を試みる。目標は、SARでは難しい大規模火災の予兆を検知することである。また、火災検知のような用途特化での実装にライブラリを活用し、当事者としてライブラリの改良を重ねることで、火災検知以外のリモートセンシングタスクにも汎用的なHS画像処理ライブラリの作成につなげていきたい。
地球温暖化による気温の上昇、気候変動による異常気象や干ばつなどの影響で、世界的に森林火災が増加している。防災領域でのテクノロジー活用は世界的に緊急性も高い。本提案の未然防止システム開発は、事業化という観点ではもう少し現場の利活用に即したPoCも増やす必要があると思われるが、未踏性の高い技術でありメンバーの熱意も高いため、今後の未踏アドバンスト事業期間中の躍進に期待したい。
2024年6月28日
2024年度採択プロジェクト概要(竹田・李・髙橋PJ)を掲載しました。