デジタル人材の育成

未踏ターゲット事業:2020年度採択プロジェクト概要(山崎・今村・加藤・新里PJ)

1.担当PM

  • 徳永 裕己(日本電信電話株式会社 セキュアプラットフォーム研究所 特別研究員 博士(理学))

2.採択者氏名

  • 山崎 清仁(有限会社ジェイズコア)
  • 今村 謙之(インターステラテクノロジズ株式会社)
  • 加藤 拓己(MDR株式会社)
  • 新里 祐教(GMOインターネット株式会社)

3.採択金額

  • 3,600,000円

4.プロジェクト名

  • 量子コンパイル基盤の最適化処理・分岐並列制御の開発と量子計算を体感するプレゼンテーション

5.応募枠

  • 応用・実用化枠

6.関連Webサイト

  • なし

7.申請プロジェクト概要

2019年度採択されたプロジェクト「RISC-V量子拡張の参照実装とマイクロ波制御量子ファームウェアの開発」では次の2つの成果を得た。

  • 「量子コンパイラ」が“存在しない状況”から“存在する状況”になった。
  • 汎用的なパルス生成ができる量子コンピューター制御のための「量子ファームウェア」のフレームワークを開発した。

この成果では当初の目論見どおり参照実装や、汎用的なフレームワーク開発はできたが、具体的な利用面では次のような課題があった。

本プロジェクトで解決する課題

課題1)量子コンパイラの最適化処理に対して

量子ゲート操作列を分解する処理が必要で、その処理で長くなった量子ゲート操作列を最適化するための様々な「量子最適化処理」の利用検討

課題2)マイクロ波制御処理の実用化に向けての課題

任意パルス波形生成におけるパラメータチューニングのテンプレート化と高負荷処理への対応

課題3)量子コンパイラ・量子ファームウェアの分岐並列制御に対して

量子ファームウェアの近くに量子ゲート操作を処理コンポーネントが必要

課題4)教育的視点での課題

量子計算を教育にも利用できるインタラクティブ(体感・体験できる)プレゼンテーションが必要
この課題に対して次のような応用的な機能を追加で開発することにより、ターゲットとなる利用者に対して、より実用的な側面と教育的な側面を整えて、今後の量子コンピューター開発の発展に貢献できるようにする。

本プロジェクトで開発する機能

開発1)量子最適化処理の追加実装
  • ターゲット利用者:量子誤り訂正後の量子回路の最適化を考え、量子命令セットのアーキテクチャを検討する人
  • 実現する機能
    量子最適化のパス機構と、現行以外の有用な量子命令セットの追加
    量子命令セットを検証するための量子回路を生成するサンプル
開発2)パルス波発生処理の追加実装
  • ターゲット利用者:無線家でマイクロ波を制御できる人で、量子の実機への応用を模索している人
  • 実現する機能
    OpenPulseからのパルス波パラメータの設定ツール
    2量子ビットの内部シミュレータ
    外部連携用パルス波データの出力
開発3)分岐並列(非同期)制御の開発
  • 本フレームワークは、量子誤り訂正などの高度な処理を高水準言語で書くための仕組みを提供する。2019年度では、量子誤り訂正前後の接続性がなかったが、本フレームワークを利用することで、量子CPUエミュレータの論理量子ビットに対する命令を、物理量子ビットに対する命令に変換した上で、量子ファームウェアと通信し制御できる。
  • ターゲット利用者: 高水準言語と汎用CPUで量子コンピューターのファームウェア制御を行いたい、または、その実現可能性を知りたい人
  • 実現する機能
    分岐並列制御・非同期処理の実行環境
    量子誤り訂正の実装と評価
開発4)量子計算を体感するアプリケーションの実装
  • ターゲット利用者:量子計算を知らない人(子供も含めて展示会に足を運ぶような人)
  • 実現する機能
    ブロッホ球の表示(1量子ビット表現)
    量子計算の過程と結果を表現した作品

8.採択理由

量子コンピュータのためのコンパイラからファームウェアにつないで最後に量子計算を体感するプレゼンテーションまで行う盛りだくさんのプロジェクトである。コンパイラの最適化は非自明なことも多く取り組む価値は高い。ファームウェアへの接続も工夫のしどころは多くありそうである。最後になかなか実感しづらい量子計算のイメージをどういう風に体感できるプレゼンテーションが完成するか楽しみである。