デジタル人材の育成

未踏ターゲット事業:2019年度採択プロジェクト概要(小津PJ)

1.担当PM

  • 棚橋 耕太郎(株式会社リクルートコミュニケーションズ リードエンジニア)

2.採択者氏名

  • 小津 泰生(名古屋大学 大学院理学研究科)

3.採択金額

  • 3,200,000円

4.テーマ名

  • 数式処理を用いたアニーリングマシン向けプログラミング言語およびその処理系の開発

5.関連Webサイト

  • なし

6.申請テーマ概要

本プロジェクトでは、既存のコンピュータでは解くことが難しい最適化問題を含む現実的な問題を解くためのプログラミング言語およびその処理系を開発する。

組合せ最適化問題を解くための有望な方法としてアニーリングが存在する。現状ではアニーリングマシン向けのプログラミング言語は存在するものの、抽象的な問題を直接記述し解くことができる言語は存在しない。今回、抽象的に問題を定義するためのプログラミング言語をつくり、これをアニーリングマシンで実行できる形式に変換する処理系を実装する。

これにより、アニーリングマシンを用いたアプリケーションの開発の敷居が下がることを期待する。また、既存の方法ではアニーリングマシンを用いて解決できない複雑な問題に対しても、問題を分割しノイマン型コンピュータとアニーリングマシンで処理を分担することで、効率よく求解できる仕組みの構築を目指す。

7.採択理由

本プロジェクトでは、アニーリングマシンを利用するためのプログラミング言語を開発する。一般にアニーリングマシンで問題を解くためには、解きたい問題をイジングモデルと呼ばれる形に変換する必要があるが、この変換はしばしば面倒な作業となる。

そこでユーザが解きたい問題を本プロジェクトで開発した言語で記述すると、それに対応するイジングモデルが生成され、内部的にアニーリングマシンが利用される仕組みを構築する。さらにこのような機能に加えて、より一般的な問題の記述も対象としており、解きたい問題を内部的にアニーリングマシンで処理する部分とデジタルコンピュータで処理する部分にうまく分割し、より効率的に処理を行う仕組みの開発を目指している。

このような問題分割に関して、数学的な枠組みによるアプローチは存在するものの、プログラミング言語によるアプローチはまだ存在せず、試みとして面白く期待が持てる。以上の理由から、本プロジェクトが秘める可能性は高く、未踏性が高いと考える。

提案者は、大学院ではトポロジカル量子計算を専門に研究している一方で、10年間に渡って言語開発を行ってきた経験があり、特に言語開発に関しては自分なりの考えやこだわりをしっかり持っている。今回、具体的な言語作成のアイデアに関してはまだ荒削りで改善の余地があると感じたものの、提案者に十分な開発経験があり、言語開発に関しても高い情熱を持っていることから、価値あるソフトウェアの開発が行えると期待できる。