デジタル人材の育成
公開日:2024年6月25日
本プロジェクトでは日本が世界に誇る文化である剣道において、自身の試合中の「動作」と「気」を反映した3Dモデルを作成し、MR(Mixed Reality)を活用してそのモデルと剣を交えることができる、新しい稽古システムを開発する。本システムを用いて相手の視点から自分と向き合うことで、自分自身の「動作」と「気」を客観的に捉え、自身の成長に繋げることが可能になる。
「気」とは剣道の試合で有効打突の条件である「気剣体の一致」の要素の一つで、これまで情報技術的な再現は難しかった。本プロジェクトでは複合的な手段を検証しながら剣道におけるこの「気」の正体を探り、これまでの剣道を築いてきた文化背景を尊重しつつ、剣道にテクノロジーを融合させる。また、剣道は高齢になっても続けることができる生涯スポーツだが、日々の鍛錬による身体への負担は大きい。本プロジェクトで、骨折・腰痛を抱える者や高齢者が無理なく剣道を生涯続けられるような、身体にやさしい稽古システムを実現し、世界中のすべての剣士にMR剣道を通じた心身の成長の機会を提供したい。
本提案は、MR(Mixed Reality)技術を用いて、自分自身と気を交わしながら剣道の稽古ができるシステムの開発を目指すものである。提案者は、剣道に対する深い理解と情熱を持ち、プログラミングにおいても実績があることから、このプロジェクトを遂行するにふさわしい人物であると判断できる。
提案者の剣道に対する哲学や理念は明確であり、「気」の再現に対する興味と定義づけは評価に値する。一方で、「気」の解明については、具体的な方法論が示されておらず、技術的な課題が残されている。今後は、発声や相互作用(間合い)等の要素に「気」が関わるという視点を取り入れ、より本質的な情報を捉えることが求められる。
二次審査のプレゼンテーションは明快で、提案者の熱意が伝わるものであった。特に、ヘッドセットと手袋、竹刀を持参しデモを行ったことは、プロジェクトに対する強い意欲の表れとして評価できる。
本システムの応用可能性として、現実世界で剣道ができない人(病気や障害などで)への体験提供や、特別支援学校での活用などが考えられる。視覚と振動でのフィードバックは、これらの場面でも有効に機能すると期待される。総合的に見て、本提案は誰もがやってこなかったことへのチャレンジであり、適切な指導のもとで新たな価値を生み出す可能性を秘めている。提案者の情熱を活かしつつ、技術的な課題を克服していくことを期待したい。
2024年6月25日
2024年度採択プロジェクト概要(古田PJ)を掲載しました。