デジタル人材の育成

未踏IT人材発掘・育成事業:2023年度採択プロジェクト概要(松村・佐藤PJ)

公開日:2023年6月19日

1.担当プロジェクトマネージャー

  • 田中 邦裕(さくらインターネット株式会社 代表取締役社長)

2.採択者氏名

  • 松村 優作(北海道大学水産科学院海洋生物資源科学専攻)
  • 佐藤 寛通(北海道大学環境科学院 生物圏科学専攻)

3.採択金額

  • 2,736,000円

4.プロジェクト名

  • 魚群や動物プランクトンの空間分布を可視化するシステムの開発

5.関連Webサイト

  • なし

6.申請プロジェクト概要

SDGsが重要視される中、水産業界も持続可能な水産業の実現を目指している。世界の水産業の漁獲量のうち半分は広大な海を相手にする天然漁業によるものであるが、国内の漁獲量は年々減少しており、漁業の効率化が求められている。効率的な漁業を目指す取り組みとして、餌が豊富に存在する好漁場がどこなのかを推定する技術開発が挙げられる。しかし、植物プランクトンの分布は衛星観測やモデルによる予測により捉えられるようになりつつあるが、魚類の餌である動物プランクトンの分布は衛星観測ができず、モデルによる予測精度も低いという問題点があり捉えきれていない状況である。このような餌資源の分布予測が可能となれば、より正確な漁場予測も可能となると期待される。

そこで本プロジェクトでは、一定海域における対象となる水産資源である魚の群れや、魚の餌である動物プランクトンの密度空間分布を推定して1日単位で予測・提供するアプリケーションを開発する。本アプリケーションでは、海水温、塩分、クロロフィル濃度(植物プランクトン濃度の指標)、流動構造など、衛星観測、運航船による観測、海流の流動モデル、生態系モデル、海洋物理・生態系モデルなどを通して得られる海洋環境のデータを説明変数として、運航船の魚群探知機で得られた魚群・動物プランクトンの空間分布と漁業船のトラッキングデータを基にした魚群データ漁場データを目的変数として教師あり学習を行い、新たに提供された海洋環境・空間分布データを逐次教師データとして取り込み、モデルをアップデートしていくことにより、1日単位の魚群・動物プランクトン分布を可視化できるようにする。本プロジェクトでは、水産研究・教育機構が毎年魚群探知機による空間分布データを採取している水産資源対象種から何種か選択し、それぞれの漁獲時期、漁獲海域における1日単位の魚群・動物プランクトンの空間分布の可視化を実現することを想定している。

7.採択理由

本プロジェクトでは、海洋環境のデータと魚群・動物プランクトンの空間分布データを組み合わせて、1日単位で魚群・動物プランクトンの分布を可視化するアプリケーションの開発を通じて、海洋におけるSDGsの実現を目指すものである。

毎年のように、イカやサンマ、また他の多くの魚介類が不漁であるという報道がなされているが、その多くの原因は気候変動に加えて獲り過ぎという事実であり、正確な資源量を把握することは持続可能な漁業において必要不可欠である。現在は水産資源調査によるサンプリングにより資源量の把握を行なっているものの、魚類の偏在などもあり正確とは言いがたいことから、本プロジェクトでは実際の資源量と、センサーや人工衛星などで取得できる植物プランクトンや海水温などの客観的データを突き合わせて機械学習を行うことで、正確な空間分布を把握しようとする。

日本は海洋大国であり、このようなプロジェクトの重要性は非常に高いが、先行する実用事例は少なく、未踏性があると考えて採択した。

更新履歴

  • 2023年6月19日

    2023年度採択プロジェクト概要(松村・佐藤PJ)を掲載しました。