デジタル人材の育成
公開日:2023年6月19日
近年、CPUやFPGA(Field Programmable Gate Array;書き換え可能な集積回路)に関する本やインターネット記事が増え、個人でマイコンを開発する難易度は下がりつつある。しかし、独自のマイコンを開発することは、それ自体が目的になることこそあれども、何らかのアプリケーションを作るための手段となる場合はあまりない。アプリケーションに合わせて独自のハードウェアを作ることは、処理のハードウェア化による高速化などのメリットがあり、メーカでは一般的に行われていることである。しかし、個人で行うにはまだハードルがある。
そこで、本プロジェクトでは、FPGAによる自作マイコンの開発を容易にする開発環境を開発する。具体的には以下の開発を想定する。
GUI設計ツール
FPGAを使うためには、初心者には機能が過剰でわかりにくいメーカ製のIDEを使い、ハードウェア記述言語を記述する必要があった。本プロジェクトでは、GUIによって直感的な操作でFPGA開発ができる設計ツールを開発し、FPGAを使うこと自体の難しさを軽減する。
ハードウェア共有システム
FPGAを使うメリットとして、処理のハードウェア化による高速化がある。しかし、特定の処理に特化したハードウェアを設計するには、ハードウェアの深い知識が必要である。本プロジェクトでは、Web開発におけるnpmのように、熟練のFPGAユーザが作ったハードウェアを共有し、他のユーザがそれを簡単に使えるようにするシステムを構築する。
本開発環境を使えば、パッケージを組み合わせるだけでマイコンを設計し、FPGAに書き込むことができるようになる。その結果として、自作マイコンを用いた組込開発が容易になり、FPGAが広く利用されるようになることが期待される。
本プロジェクトでは、FPGAを使って自作マイコンを作成したい人に向けて、GUIで簡単にそれを開発できる環境を作ることを目的としたものである。
提案者は、リレーを使ったCPUを開発したり、ロジックICを組み合わせたCPUを開発したり、多くの人が使うだけであるCPUを、自ら作るものとしてモチベーションを持っており、今回のプロジェクトについては、本当に自分がやりたいことをプロダクトとして実現させたいというものである。自分がやりたいだけではなく、教育の観点でもFPGA上でHDLを使わずにCPUを設計できるというプロダクトの価値は大きい。
その上で、さまざまなユーザがGUI上で簡単にCPUを作れるようにするためのUI/UXの設計やユーザテストなどは、単なる好きなことを超えてプロダクト開発のプロセスをなぞらないといけないものでもある。乗り越えないといけない課題は多くあり、未踏性があるものと考えて採択した。
2023年6月19日
2023年度採択プロジェクト概要(太田PJ)を掲載しました。