デジタル人材の育成

未踏IT人材発掘・育成事業:2023年度採択プロジェクト概要(岡田PJ)

公開日:2023年6月19日

1.担当プロジェクトマネージャー

  • 落合 陽一(メディアアーティスト/筑波大学 デジタルネイチャー開発研究センター センター長)

2.採択者氏名

  • 岡田 拓真(立命館大学理工学部機械工学科)

3.採択金額

  • 2,736,000円

4.プロジェクト名

  • 乳化量最大化を目指したエスプレッソ抽出制御システムの開発

5.関連Webサイト

  • なし

6.申請プロジェクト概要

本プロジェクトでは家庭用エスプレッソマシンで乳化量が最大化できる制御システムを開発する。これはエスプレッソ抽出において乳化量が最大となる条件を見つけ出し、それに合わせて温度・時間・圧力などの制御を可能にしようとするものである。

エスプレッソはイタリア発祥のコーヒー抽出方法で、世界中で楽しまれている。例として、エスプレッソベースのアレンジドリンクの販売、カプセル式エスプレッソシステムが挙げられる。これらは世界中の人に楽しみを与え、生活水準を向上させ、生産性を向上させている。エスプレッソはドリップコーヒーと違い、コーヒー豆に9気圧をかけて抽出するため、エスプレッソマシンなどの専用の機械が必要である。そして、美味しいエスプレッソを作ることを目指し、一般的な家庭用のエスプレッソマシンを改造することは不可能ではない。また、美味しさを作る一つの基準として、エスプレッソが上手く乳化するかという点が挙げられる。エスプレッソは乳化すると3層になり、泡状になってコーヒーの香りを閉じ込めるため美味しく感じるようになる。そして、最高の乳化を目指して、エスプレッソマシンのアナログ温度制御にPID制御装置をつけ、温度を一定に保つことで上手く乳化させる改造方法がよく知られている。

一方で、エスプレッソの乳化にはその日の気温・湿度・豆の焙煎日数などが関係し、熟練のバリスタはそれらの情報を元に経験的に抽出温度と挽き具合を調整しているため、実際には常に同じ結果になる装置ではなく、その時の状況によって設定が変化する装置が適切である。

本プロジェクトでは、機械学習モデルに気温・湿度・豆の焙煎日数などの変数とその時の乳化度合いの関係を学習させ、乳化量の最大化を目指す変数を推論させ、それをエスプレッソマシンの制御に組み込んだエスプレッソ抽出制御システムを開発する。本システムによってエスプレッソの美味しさを向上させ、あっと驚く体験を新たに作り出すことによって、世界中の人々に感動体験を届けたいと考えている。

7.採択理由

提案者は幼少時にエスプレッソの味に感動し、以来エスプレッソを作ることに日々その人生を捧げてきたように見受けられる。提案者が自作したというエスプレッソマシンを見るに、エスプレッソに自らのテクノロジーを掛け合わせて最良のエスプレッソを作り続けない訳にはいかないのだろう。デジタル技術のパラダイムとしてIoTやユビキタスコンピューティングの時代になって久しいが、近年のあらゆるもののAPI化、大規模言語モデル以降の開発環境の変化は、エンジニア像にも変化を生み出すと私は考えている。提案者のようにエスプレッソを通じて世界を感じ、自身を表現し、その自己実現のために技術的手法を用いる姿が実に魅力的であり未踏的である。ゆえに、その熱量と発展性から採択とした。

余談だが面接審査の際に「エスプレッソテクノロジーの人間として生きていく意気込みはありますか?」と尋ねたら、提案者は「ある」と答えていた。全身全霊で未踏のエスプレッソ期間を過ごしてほしい。

更新履歴

  • 2023年6月19日

    2023年度採択プロジェクト概要(岡田PJ)を掲載しました。