デジタル人材の育成

未踏IT人材発掘・育成事業:2023年度採択プロジェクト概要(子安PJ)

公開日:2023年6月19日

1.担当プロジェクトマネージャー

  • 落合 陽一(メディアアーティスト/筑波大学 デジタルネイチャー開発研究センター センター長)

2.採択者氏名

  • 子安 竜司(北海道大学農学院生産フロンティアコース)

3.採択金額

  • 2,736,000円

4.プロジェクト名

  • 対話可能な選択的機械除草ロボットの開発

5.関連Webサイト

  • なし

6.申請プロジェクト概要

農業の有する多面的機能として、国土の保全、水源の涵養、自然環境の保全、良好な景観の形成、文化の伝承が挙げられる。近年、特に中山間地域で耕作放棄地が増加しており、雑草の種子や病害虫の源泉となる等の問題が起きている。農家の耕作面積を増やすことで、収入を増やしつつ多面的機能を果たすことは意義深い。

本プロジェクトでは、従来のスマート農業の影になっていた中山間の農家に光を当てた機械除草ロボットを開発する。本ロボットによって、農薬を使う必要がなくなり、経済的なメリットだけでなく、生物多様性や地力の向上など様々な効果を生み出す。さらに、「雑草」を雑に一括りにするのではなく、種類ごとに選択的に除草することを可能にする。雑草には良い雑草と悪い雑草があり、悪い雑草だけ取れば良いと考える自然栽培系の農家は多い。こうした細かな要望に応える柔軟性を持たせるために、「対話可能」で「トポロジカルマップ」によるナビゲーションを実装する。例えば「トマトの畝を除草しておいて」と自然言語を通じて指示することができるようにすることで、より動的に除草ロボットの経路を生成し、タスクを遂行できるようにする。近年の技術的革新であるLLMや視覚・センサ・計算機の性能の飛躍的な向上によって可能になる機能も考えられる。これらを農業分野にも応用し、組み合わせることで、研究以上の価値を持つプロダクトの実現を目指す。

また、副次的には、中山間の農家をより魅力的な選択肢として引き立てる効果も期待される。本プロジェクトによって、耕地面積が増えて収入が増加した、精神的に豊かなライフスタイルが送れるようになった、ロボットのおかげで泥臭い除草から解放された、といった魅力を生み出したい。

7.採択理由

高性能の大規模言語モデルの登場以降、対話可能ロボットへの組み込みとその対話性能の技術的発展は飛躍的である。技術的環境の変化の中で提案者は農業へのロボットの応用へ並ならぬ熱意を持って取り組もうとしている。トポロジカルマップの対話的生成や除草のための分類、移動やマニピュレーションなど、課題は山積であるが、現在大規模言語モデルとAPIの組み合わせにより開発者の能力自体も飛躍的に向上していると考えられるため、プロトタイプの作成に関して熱量があれば実装し切るのではないかと考え、採択とした。

もちろんハードウェアに関する問題は多く存在するものの、提案者が掲げるようにユーザ主体で農業と対話型ロボットのムーブメントを作ろうとする姿勢に強く惹かれた。自作ロボットの経験や自身の農業体験も含めて魅力的な人材である。未踏期間で自身の情熱に没頭して、ぜひ当該分野を牽引する人材に育っていってほしい。

更新履歴

  • 2023年6月19日

    2023年度採択プロジェクト概要(子安PJ)を掲載しました。