デジタル人材の育成

未踏IT人材発掘・育成事業:2022年度採択プロジェクト概要(三林PJ)

最終更新日:2022年6月20日

1.担当PM

  • 田中 邦裕(さくらインターネット株式会社 代表取締役社長)

2.採択者氏名

  • 三林 亮太(兵庫県立大学大学院情報科学研究科 博士後期課程)

3.採択金額

  • 2,736,000円

4.テーマ名

  • ラップバトル対話システムの開発

5.関連Webサイト

  • なし

6.申請テーマ概要

本プロジェクトは、ラップバトル対話システムの開発に取り組み、実際にラップバトルの大会に出場させることを目標とする。ラップバトルとは、2人のラッパーが対話形式で即興ラップ(バース)を行い、どちらのラップが優れているかを競う競技である。ラップバトルは主にライム(韻)、アンサー(返答)、フローの3つの観点から評価されるが、この3つの観点をふまえたバースを考えることはプロでも難しい。これらの条件をクリアするには、優れた頭の回転と豊富な語彙が必要である。そこで、速い処理速度と大きな記憶容量を持ち合わせる計算機を用いたラップバトル対話システムを開発する。

本システムの実現により、創造的な即興ラップ(バース)の生成が期待でき、人工知能技術にあらたなインパクトを与えることができる。これまでに、チェスや将棋など、人間VS人工知能の挑戦は社会に大きなインパクトを与えてきた。しかし、それらは強い制約に基づくルールが決められた競技での勝負であったが、ラップバトルのような、創造的な要素が強いルールにおいての人工知能との勝負は、チェスや将棋以上のインパクトがあると考えられる。

本プロジェクトの目標達成のために、具体的には大きく3つ、
(1)バース生成手法、
(2)ラップ音声変換手法、
(3)多様なデモシステム
を開発する。

7.採択理由

本プロジェクトでは、ラップバトルが本当に好きな提案者が、自らの計算機科学の能力を活かして、計算機を1人のラッパーとしてラップバトルに出場させるという野心的なもので、元来人間がやるべきものと思われていたエンターテイメント分野における、新星が現れたものと考える。

ラップバトルとは極めてクリエイティビティの高い競技であり、ライム(韻)の良さと、アンサー(返答)のバリエーション、そしてフロー(リズム)の印象という3つの要素を、相手の即興ラップ(バース)を反映しながら考えるというのは、プロでも難しい。

他方、ライムの分解については母音の判定であり、バースの選択はボキャブラリーの探索であり、実は計算機が得意とするところであるのが重要なポイントである。

プロジェクトにおいては、人間の声を解析し、相手のバースを構造的に理解して、文脈的にも一致するアンサーを返す一連の動作を実装する必要があり、既存のAPIやライブラリを組み合わせるだけではない相当な困難性も伺える。

このように、本人のこれを実現したいという高いモチベーション、計算機を利用することの合理性、そして乗り越えないといけない未踏な困難性、何よりこのプロジェクトの成果発表会で実施されるであろうラップバトルを期待して採択することとした。

更新履歴

  • 2022年6月20日

    2022年度採択プロジェクト概要(三林PJ)を掲載しました。