デジタル人材の育成
最終更新日:2022年6月20日
本プロジェクトは、鋼構造物の改修塗装工事において、「膜厚管理業務」の業務を根底から改善するハードウェアとソフトウェアを開発することにより、現行の手法と比較し、より短時間で適切な品質管理を可能にするものである。
膜厚管理とは、主に建築・土木分野の公共事業において、橋や鉄塔など鋼鉄製の構造体の建設/改修の際に、塗料を塗布し塗膜厚が一定の水準を満たしているかを検査し管理する業務のことを指す。この業務は着工から完工までに、設計に基づく仕様の塗装工程のたびに必要となる。現在の膜厚管理では特定の“点”を計測するので、品質保証のため多くの点を計測する必要がある。本プロジェクトでは“面”を測定・管理する手法を開発し、品質を担保すると同時に計測する回数を減らす。
具体的には、既存の測定方法と波長の計測を併用することで、膜厚分布を測定できる膜厚測定器を開発する。加えて、測定器と連動し、所管の官庁への提出書類を自動作成できるアプリケーションを開発する。この組み合わせにより業務フロー自体をデジタル化することで管理業務を減らし、従来よりも適切な品質管理を可能にする。
現在、橋梁などの鋼構造物のインフラの老朽化が社会課題になりつつある。2020年代後半には全国72万ある橋の6割が建設後50年以上を迎えるため、適切なメンテンナスによる長寿命化が喫緊の課題だ。しかし、少子高齢化により建設業従事者数も減少傾向にあり、厳格な品質管理が求められる公共工事を実施するために高いスキルを持つ人員を確保することは年々難しくなっている。現在でも、必要な人材を確保できず、公共事業を受注できない業者が多くいる。これらから増加する鋼構造物のメンテナンスのニーズと、実施できる人材不足のギャップは、インフラ維持に影響を及ぼすだろう。本プロジェクトは、管理業務の人員や業務時間を削減し、品質管理の質も上げることで、老朽インフラの維持に貢献したい。
本プロジェクトでは、橋や鉄塔などの建設・改修の際の塗膜厚が一定の水準を満たしているかを検査し管理する業務「膜厚管理」に着目し、DX化に欠かせない測定器の開発と連携アプリケーションの開発を行なう。
建築土木現場における、
(1)特定の点においての膜厚しか測れない、
(2)手作業で測定値を入力している、
といった問題を本プロジェクトで解決することを目指す。
そのような現場の声を聞いてはじめて明示的になった課題を扱っている点を評価して採択とした。測定器などのハードウェアと、データ連携・自動合否判定などのソフトウェアの両面から開発に取り組む必要があるが、自分が解決しなければ他にやる人がいないと言う提案者の熱意に期待する。現場で実際に運用可能なレベルまで仕上げて土木現場のDX化に貢献して欲しい。
2022年6月20日
2022年度採択プロジェクト概要(中村PJ)を掲載しました。