デジタル人材の育成
最終更新日:2021年6月25日
昨今XRに注目が集まっているものの、日常的普及には至っていない。その大きな理由の一つとして、XRがゲームの一つのジャンルとしての位置づけが強く、実用的ツールとして認識されていないことが考えられる。VRが実用的な作業空間として利用されるためにはハードウェア側の発展(解像度や装着感の改善)と同時にソフトウェア側の発展も必要である。
Linuxなどのデスクトップ環境ではX11というWindow Systemが採用されており、それにより複数のアプリケーションが同時に起動してディスプレイ上に表示され、ドラッグ・アンド・ドロップやコピー・アンド・ペーストなどの入力を適切にアプリケーションに渡しながら、アプリケーション間で協調して作業を進めることができている。一方VRアプリケーションはそのようなアプリケーション間の協調を可能にする抽象化レイヤが存在しない。
そこで本プロジェクトではX11をXR向けに拡張したZ11を開発することで、3Dアプリケーションが複数起動し、協調可能な環境を実現する。これにより、乱立するXRデバイスに対してアプリケーションが個別にそのドライバへの対応をしなければいけない問題を解決し、2Dアプリケーションへの後方互換性を保ちつつ、この上ない広範囲なディスプレイ環境で実用的な作業空間を備えるXRが実用面で発展することを目指す。
ヘッドマウントディスプレイ(HMD)を用いたXR環境で、複数の2Dアプリ、また、あわよくば複数の3Dアプリを同時に提示できるウィンドウシステムを開発する。
HMDを用いたXRの応用は3Dアプリが主ではあるが、2Dアプリを3D空間に提示する、いわばマルチディスプレイのような活用法も強く期待されている。このプロジェクトは、そうしたXR活用を現実に大きく近づける。技術的な難易度はかなり高く、また、複数アプリの提示法、操作法など、工夫・研究の余地も大きい。木内君と江口君は、この困難な課題に対して、現実的な道筋を提示できる能力を備えている。もちろん、やってみないとわかないことは山ほど待っているだろうが、能力の点でも意欲の点でも、彼らが目標の一番近くにいる。
2021年6月25日
2021年度未踏IT人材発掘・育成事業:木内・江口プロジェクト概要を掲載しました。