デジタル人材の育成
最終更新日:2021年6月25日
2022年度から高校で「情報I」の必修化が始まるが、高校の教科に「情報」が新設された2003年~2020年の17年間で、7県が一度も情報科の教員採用を行なっていなかったことや、情報科専任教員の割合が8割を超える県が3県ある一方、1割未満の県が26県もあることから、情報教育に明確な地域格差が存在していると言える。
高校では個人の端末を授業で利用するBYOD(Bring Your Own Device)を前提としていることから、GIGAスクール構想による端末導入の補助がないため、生徒一人ひとりの端末に合わせて実行環境の構築と管理をする必要がある。そのため、多くの学校でオンラインの実行環境を利用してプログラミングの授業を行うことが考えられるが、現存するオンラインの実行環境ではログインに時間がかかることや、実行ボタンを押してから結果が表示されるまでが遅いことにより、生徒に使いにくいという印象を与えている。
本プロジェクトでは以下の開発を行うことで、これらの問題の解決を目指す。
個人情報保護に関する法律・条例は、地方自治体でそれぞれ制定されたものも含めて2000個近くあり、それぞれで個人情報の定義や解釈が異なる部分もある。本プロジェクトでは、バージョン管理システムで収集した学習データが、それら個人情報保護の法律に則って適切にユーザに提供されるように、システムを設計・開発する。
バージョン管理システムのデータを元に、生徒のプログラミングの過程を分析・可視化できるようにすることで、教員不足でも生徒一人ひとりに合った学習のサポートが可能となり、地域格差の解消、指導の質の向上や効率化が期待できる。
教師用プラットフォームによって蓄積された問題の中から、生徒のプログラミング能力に合った問題を提示できるようになれば、文部科学省がGIGAスクール構想で推進する、いわゆる「AIドリル」が実現する。本プロジェクトを通して、GIGAスクール構想における最終的な目標である、生徒の教育データを収集・分析し、個別に最適化した学習の実現を目指す。
本提案は、ブラウザ上で単独で高速に動作する、環境構築・管理が一切不要のプログラミング学習基盤を構築するものである。
現場の課題や個人情報の法律など、現状をよく調べた上での提案であり、現場の教員や生徒が本当に使えるものにしあげていく熱意を感じた。
どのレベルの教育に照準をあわせるかといったことが課題でもあり、普及のカギでもあるだろう。すでにプロトタイプも出来上がっており、積極的に教育現場で使いながら、検討・開発していくことを期待する。
2021年6月25日
2021年度未踏IT人材発掘・育成事業:坂口プロジェクト概要を掲載しました。