デジタル人材の育成

未踏IT人材発掘・育成事業:2020年度採択プロジェクト概要(松下・近藤・平岩PJ)

1.担当プロジェクトマネージャー

  • 田中 邦裕(さくらインターネット株式会社 代表取締役社長)

2.採択者氏名

  • 松下 悠里(九州大学 大学院 工学府 航空宇宙工学専攻 修士2年)
  • 近藤 耕太(九州大学 工学部 機械航空工学科)
  • 平岩 尚樹(九州大学 大学院 工学府 航空宇宙工学専攻 修士1年)
  • 高橋 雄文(九州大学 大学院 工学府 航空宇宙工学専攻 修士1年)

3.採択金額

  • 2,736,000円

4.テーマ名

  • 宇宙ごみの運動推定システムと実証衛星の開発

5.関連Webサイト

  • なし

6.申請テーマ概要

宇宙空間に存在する使い終わったロケットや人工衛星などを「宇宙ごみ」という。宇宙ごみは地上から確認できない微小なものも含めると約5兆個あると言われており、秒速7kmで地球を周回する。莫大な運動エネルギーを持つ宇宙ごみが運用中の衛星に衝突した場合、衛星の機能に致命的な損傷を与える。これにより、天気予報、通信、安全保障サービスなど、我々が日常的に利用するサービスが使用できなくなる危険性がある。
現在、様々な宇宙ごみの除去方法が研究されているが、宇宙ごみの除去に成功した例はない。そのボトルネックは、除去衛星の設計時に地上から宇宙ごみの運動が正確に把握できなかったことにあった。例えば、除去対象となる宇宙ごみが高速に回転していれば、網や粘着剤で捕獲しようと試みても除去に失敗する可能性が高い。しかし除去対象の運動をあらかじめ把握することができれば、対象に対して捕獲を行う際の成功率を格段に向上することができる。
本プロジェクトでは、宇宙ごみの運動推定システムとその実証衛星を開発する。本システムは、宇宙ごみの明るさの時間変化(ライトカーブ)から宇宙ごみの運動を高精度に推定することで、将来の宇宙ごみ除去衛星のミッション設計をサポートする。加えて、推定システムの実証のため小型衛星を開発し、衛星から送られる運動データと推定システムを用いた運動推定結果を比較することで、システムの精度や汎用性の向上を継続的に行う。本システムの「安価で高精度な手法の確立」と「世界初の実証」という特徴から、宇宙環境の改善が期待される。

7.採択理由

スペースデブリ(宇宙ゴミ)が人類の宇宙開発において問題になっており、その除去をどのようにするかは大きな課題であるが、ひとつひとつのデブリの動きが複雑であり、その運動を地上から推定することは非常に重要である。
そのような中で、ライトカーブ(地球から見たときの対象物の明るさの時間的変化)から、デブリが太陽面に対してどのように変化をしているかを安価な機器で高精度に推定、かつ運動を導き出し、世界で初めてその技術を宇宙空間で実証するという本提案は、大変未踏性が高い。
実際に衛星を使って検証することは未踏期間終了後を予定しているため、未踏期間中に実現できることは大きな目標の中の一部かもしれないが、プロジェクト全体において未踏期間における大きな飛躍を期待して採択した。

8. 契約辞退

採択者のうち、高橋雄文氏は都合により契約締結に至りませんでした。