デジタル人材の育成
首藤 一幸(東京工業大学 大学院情報理工学研究科 数理・計算科学専攻 准教授)
感情の起伏などの心の状態は、本人や周囲の人には分かりづらいものである。風邪などの体調の変化は体温計で熱を測ることで簡単に気付けるが、心の疲労度合いについては、体温計のようにそれを簡単に測れるツールは存在しない。そこで本プロジェクトでは、生体情報のセンシングと行動ログの解析によって利用者の感情を定量化し、心の状態を可視化して日々の生活を快適に過ごすためのシステムを開発する。
本システムによって、ユーザは自分でも気付きにくい心の状態について分かりやすく知ることができるようになる。本システムからの通知に基づいて、ユーザが日々の生活習慣を振り返ったり、適度なタイミングで休息をとったりすることで、気持ちの落ち込みを防ぐ手助けになると考えられる。また、心の状態を示す指標を作ることで、感情を周囲の人に伝えやすくなり、お互いに感情の起伏を理解・配慮しやすくなる方向に社会を変えられる可能性がある。
利用者の心の状態を推測・可視化・伝達するソフトウェアの提案である。利用者の行動や身体の状態、例えば歩数や心拍数に基づいて、心の好調・不調などを推測する。
性格の異なる様々な利用者に対応できるか?妥当な推測結果を出せるのか?そもそも推測結果の良し悪しをどう評価するのか?などなど、行く手にはとても多くのチャレンジがある。未踏プロジェクトの限られた時間では、万能の推測方法は編み出せないかもしれない。しかしそれでも、このプロジェクトの成果物は、続く多くの同志が推測方法を研究していくための基盤となるだろう。