デジタル人材の育成
後藤 真孝(国立研究開発法人 産業技術総合研究所 情報技術研究部門 首席研究員)
昨今のヘルスケア用途のウェアラブルデバイスの多くは、バイタルサインや移動距離、消費カロリー、睡眠時間といったユーザ自身のステータスをモニタリング、記録、管理するものがほとんどであり、人々の周りの環境をセンシングし、ヘルスケアに役立てるモノやサービスはまだ少ない。
そこで本プロジェクトでは人を取り巻く環境の中で、太陽光から発せられる紫外線に注目した。太陽光は人々の暮らしに必要不可欠なものであり、健康を維持するためにも毎日10から15分の日光浴が必要だと言われている。しかし日光を浴びすぎると、それに含まれる紫外線が皮膚ガンや白内障・失明、免疫低下などをもたらしたり、日焼け、シミ、たるみといった肌へのダメージの原因にもなったりする。
本プロジェクトではまず、女性向けの紫外線対策を目的としたウェアラブルデバイスとサービスを開発する。小型な紫外線計測器などが市販されているが、携帯性やサービスの面で実用性が乏しい。本プロジェクトで開発するデバイスは、装着性とセンシングのしやすさから、カチューシャなどの頭部に装着するアクセサリ型デバイスとする。また本デバイスと連携させ、紫外線量の履歴や服装アドバイス等を表示できるアプリケーションソフトウェアを開発する。
加えて、紫外線以外の環境情報のセンシング、サービス開発の実現も視野に入れ、これらによるQuality of Life(QOL)向上を目指していく。
装着者の周囲の環境をセンシングしてヘルスケア等に役立てることを目的として、携帯性が高くウェアラブルなアクセサリ型環境計測デバイスおよびスマートフォンアプリケーションを開発する提案である。例えば、頭部に装着して太陽光からの紫外線を計測するカチューシャ型のハードウェア「スマートカチューシャ」を開発し、紫外線量の履歴や服装アドバイス等を表示できるアプリケーションソフトウェアを開発することを目指している。
笹田さん、時君は、「太陽光とうまく付き合っていくための健康管理」「美容の側面でのケア支援」という動機に基づいて、既に「スマートカチューシャ」のプロトタイプデバイスまで開発しており、二人のチームとしてバランス良くハードウェアやデザイン、アプリケーションに情熱を持って取り組もうとしている点を高く評価した。プロジェクト開始後には、形状や装着の仕方、機能等に関して、事前の検討内容だけに限らない様々なアイディアが出る可能性もある。二人が考えていた計画を少しでも前倒しして実施し、提案内容だけに限定せずに幅広く挑戦して、全力でプロジェクトを進めることを期待したい。既に二人が調査したように小型な紫外線計測器などの競合もある中で、どういう大きな発展をしていくのか、採択後の活躍が楽しみである。