デジタル人材の育成
石黒 浩(大阪大学大学院 基礎工学研究科 システム創成専攻 教授)
チーフクリエータ
鈴木 孝宏(公立はこだて未来大学大学院 システム情報科学研究科システム情報科学専攻)
本プロジェクトでは、入力ステップ数が小さくて済む文章生成システムを開発する。 本システムは、居場所や時刻などのユーザの置かれている状況(以降「シチュエーション」とする)を基にテキストを生成・提示し、それを選択することによりユーザの行動や発言を手軽に入力できるようにするスマートフォン向けの文章入力システムである。
スマートフォンでのコミュニケーションはTwitterやLINEのようなテキストによるものが主流で、そのテキスト入力は文字入力ソフトウェアによって可能になっている。スマートフォンは、屋内外を問わずユーザのいるところであればどこでも使用されることから、テキストにはユーザのシチュエーションが表現されているケースが多い。しかしながら、文字入力ソフトウェアはシチュエーションまで考慮してはおらず、ユーザのシチュエーションとは関わりのない語彙を提示することがある。
そこで本システムでは、ユーザが自らのシチュエーションをシステムに設定する単純な操作により、手軽にシチュエーションに応じた文章が入力できるようにする。従来の予測変換では字面による単語・フレーズを予測するため、それだけでシチュエーションに応じた文章を作ることには向いていなかった。本システムは予測変換とは異なり、ユーザのシチュエーションを基にテキストを絞り込み、文章として生成する。このため、ユーザはシステムが提示した文章のリストから自分の言いたいことを選択するだけで文章を入力できるようになる。定型文を利用した入力にも似ているが、本システムではユーザは文脈に沿ったフレーズを考える必要がなく、システムが自動的に文脈に沿った形に変形して文章を生成する。それにより、例えばスマートフォンを使って買い物をお願いしたり、作業報告をしたりする際の入力で、その手間がより手軽なものになると期待される。
現在多くのユーザを持つツイッターにおいて、本提案はより簡単にツイートできるシステムを考案している。この提案の他にも、スマートフォンが持つ様々なセンサからユーザの行動を把握して、ツイートする文章の候補を絞り込んだり、自動的にツイートするアイデアも提案されているが、本提案の優れている点は、ツイートする文章の選択において、その内容を2次元平面に構造化して配置している点である。その構造化のテンプレートを様々に準備することによって、非常に少ないタッピング回数で、本来自分がツイートしたい内容を簡単にツイートできる可能性がある。
本提案を成功に導く鍵は、準備するテンプレートの構造に関する検討と、センサ情報との組合せにある。それらが適切に解決できれば、すぐにでも普及するシステムを開発できると期待される。