デジタル人材の育成

未踏IT人材発掘・育成事業:2013年度採択プロジェクト概要(権瓶PJ)

1.担当プロジェクトマネージャー

後藤 真孝(産業技術総合研究所 情報技術研究部門 首席研究員)

2.採択者氏名

  • チーフクリエータ
    権瓶 匠(公立はこだて未来大学大学院 システム情報科学研究科)

  • コクリエータ
    村山 寛明(公立はこだて未来大学大学院 システム情報科学研究科)

3.採択金額

  • 2,304,000円

4.テーマ名

  • マンガ作家の海外展開を支援するプラットフォームの開発

5.関連Webサイト

  • なし

6.申請テーマ概要

本プロジェクトでは、マンガ作家、出版社、読者、文化や語学学習をしたい人、海外展開をしたいマンガ作家を支援するシステムを開発する。まず、本システムでは、翻訳が済んでいるマンガのセリフを集め、日本語とそれに対して行われた外国語の翻訳データベース(DB)を構築する。本システムでは、マンガの吹き出し(コマ)を抽出し、吹き出し中にある文字に対してOptical Character Recognition(OCR)による文字認識をする。その後、抽出した文字と作成していたDBを照合し、マッチングしていた場合、そのままそのセリフの翻訳とする。マッチングしない場合は機械翻訳をして吹き出しに戻し、それを翻訳とする。これらの翻訳は自動で行なうため、訳が不適切な場合がある。読者に翻訳の編集権限をもたせることで翻訳精度を高める。
マンガのセリフを利用したDBの利点を挙げる。野球漫画では「左中間抜けたー」のような表現があるが、そのような主語抜き言葉では、機械翻訳ではうまくいかない。野球のマンガではこのような表現は数多く存在するが、複数のマンガを跨って頻出する。よって本プロジェクトのようなDBの構築をすることで、簡単に精度の高い翻訳へと応用することができる。
本システムにより、マンガを自動で高精度に翻訳できるようになることで、ウェブを中心に活動しているマンガ作家の海外展開の支援が可能となると同時に、世界中の人々がそのマンガを容易に読むことができるようになる。

7.採択理由

クラウドソーシングでユーザの力を借りながらマンガに特化した翻訳を可能にするWebサービスを実現する提案である。
マンガの画像から吹き出しやセリフの文字を自動抽出して文字認識し、既に翻訳済みの多数のマンガのセリフのデータベースとのマッチングをすることで翻訳したり、マッチングできなければ機械翻訳を用いたりする。そこで不十分な点はクラウドソーシングでユーザに協力してもらって改善していくことを狙っている。技術的な課題は多く、いかにユーザが協力したくなるサイトを作り、公開して実証的に進めることができるかがチャレンジングである。
権瓶君、村山君は、マンガという自分たちが好きなジャンルの発展を願って、「ウェブを中心に活動しているマンガ作家の海外展開の支援したい」、「海外展開を積極的に行なっていくプラットフォームとして、世界中の人に使われることを目指したい」という情熱を持っており、既にWeb上で実装を開始してプロトタイプ構築を始めている点も彼らの本気さを示していて素晴らしい。
実用性を高めるには大規模な開発になることも予想され、提案内容だけで満足せずに、マンガ独自のフォント表現への対応等の様々な挑戦をして、野心的に進めてくれることを期待したい。