デジタル人材の育成

未踏IT人材発掘・育成事業:2012年度採択プロジェクト概要(石澤PJ)

1.担当プロジェクトマネージャー

首藤 一幸(東京工業大学 大学院情報理工学研究科 数理・計算科学専攻 准教授)

2.採択者氏名

  • チーフクリエータ
    石澤 恵(お茶の水女子大学大学院 理学部情報科学科?渡辺研究室)

  • コクリエータ
    吉國 綺乃(お茶の水女子大学 理学部情報科学科?渡辺研究室)

3.採択金額

  • 1,792,000円

4.テーマ名

  • Account Reachability Checkerの開発

5.関連Webサイト

  • http://www.archecker.net/

6.申請テーマ概要

昨今、ソーシャルネットワーキングサービス(Social Networking Service、以降SNS)が普及し、そのユーザは著しい増加傾向にある。SNS上でユーザはプロフィールを作成したり、日記を書いたり、友人同士のリンクをはり合ったり、グループに参加したりして他のユーザとの交流を楽しんでいる。しかしこれらの行為は、他のユーザに対して個人情報を公開するという、プライバシの観点を強く持つべき行為であると言える。ユーザは往々にして自分の個人情報を第三者に対してどの程度公開しているかを把握しているつもりでいる場合が多いが、自分の想定と実際に公開している情報を見直した結果には大きな齟齬がある場合は少なくない。この齟齬には普段はあまり気づくことはなく、インターネット上の炎上事件等の突発的なトラブルになって初めて気づかされることが多い。つまり、気づいたときには既に手遅れとなってしまうことを考えると、事前に自分の公開している情報の内容、範囲などを正確に把握する必要性がいかに高いかが言える。
そこで本提案では、SNSユーザが自分の公開している情報の開示性を正確に把握することで、プライバを保護・チェックすることを支援するツールを開発する。
本提案の特徴の一つとして、1人で複数のSNSを利用しているユーザの傾向に着目している。複数のSNSを利用しているユーザはそれぞれのサービスを連動して利用していることがあるが、例えばあるサービスを仕事用、ある別のサービスを趣味用といったように使い分けをしている場合が多い。その使い分けを第三者に特定されると、ユーザの意図では分離しているつもりの情報が関連づけられた状態で個人情報が収集されてしまう。よって複数のSNSにまたがるアカウント情報を関連づけられなくすることは、プライバシ管理の側面で重要な一つの要素と言える。
本提案では、複数のSNSアカウントが同一人物のものであると第三者に特定される可能性をアカウント到達可能性(Account Reachability)と定義する。その定義の導出式を作成して実際のSNSアカウントに適用し、同一人物のものと特定される可能性を計算するシステ ムの実装を行う。
また、本システムの実際のSNSユーザによる利用を通して、SNSプライバシに関して広く警鐘を鳴らすことも目標とする。

7.採択理由

SNS等のネットサービスを利用する際、我々は、自身についての氏名や年齢といったデータをどのくらい露出するか、コントロールする。利用するサービスによって露出の度合い・仕方を変えたり、実名・匿名を使い分けたりすることもあるだろう。そこで、意図せぬ露出の度合い・仕方となっていないかを調べるツールを、石澤さん、吉國さんは提案している。特に、異なるサービスのアカウントが同一人物(つまり自分)のものであるか否かを調べる。
今、データの流動性は高まる一方であり、大量・高速処理の敷居は下がる一方である。自身についての情報をどういう相手にどのくらい流すかのコントロールは、社会を生きる上での必須リテラシとなりつつある。提案ツールを用いて露出を調べ、自身が意図した露出と比較することで、利用者はこの種のリテラシを向上させられる。また、露出を調べる手法の探求にも意義がある。
提案は、複数アカウントの関連度合いを調べるというものであるが、これに限らず、露出の仕方・度合いに影響を与える他の要素も見直して、効果の高い手法・ツールを目指して欲しい。