デジタル人材の育成
増井 俊之(慶應義塾大学 環境情報学部 教授)
チーフクリエータ
米辻 泰山(東京大学大学院 工学系研究科精密工学専攻・医用精密工学研究室)
インターネットの発展によって絵、音楽、小説など様々な作品の発表が容易になり、多くの人々が気軽に創作活動への参加ができるようになってきている。しかし、それら作品の制作には未だに多大な労力が必要とされるのが現状である。そこで本提案では、小説やコミックコンテンツを主な対象として、作り手の労力の省力化を図った作品形態であるecoMakiを提案し、その製作環境を開発する。
ecoMakiは以下の特徴によって、コストパフォーマンスの高い作品創作を可能とさせる。
構成要素の分割とリサイクル
キャラクター、舞台、挿絵などをライブラリ化し、積極的に再利用する。
描写コストの削減
挿絵を多用し、セリフを主体とする事で文章による描写のコストを下げる。キャラクターの絵やセリフはリサイクルも容易になる。
構成要素のパッケージ化、共有化
キャラクターや舞台の挿絵や描写、設定をまとめたパッケージを作り手の間で共有することで、分業と製作規模の縮小が可能になる。 本提案ではecoMakiの制作のための環境として、以下のものを開発する。
ブラウザ上で動作するエディタ
画像、文章を統合して扱い、ライブラリから呼び出した要素を簡単に追加、編集できるようにするためのエディタ。イラスト、文章の追加、レイアウト、および編集が可能。また、Web上に設置する事で製作から公開がシームレスに、あるいはリアルタイムに行う事が出来る。
ライブラリ
キャラクターや舞台の挿絵や描写、設定をまとめたパッケージのライブラリ。ユーザが自由にコンポーネントを追加できるライブラリをサーバー上で共有することで、例えばキャラクターだけを作る、キャラクターは全く作らずにストーリーだけ作るという分業が可能になる。
作品発表スペース
作った作品を公開してユーザの交流を可能にするためのWebサイト。前述のエディタを組み込む事で読者が編集、改変作業を行う事が容易になる。
また、正しく運用する事で、他者の著作物を再利用しつつその権利を尊重する事ができる。例えば、ある作品が商業化した時、その作品のライブラリの使用履歴を調べれば誰がどの程度その作品に対してコミットしたかわかり、それを元に利益を適切に分配することが期待できる。
有用なソフトウェアのライブラリやサンプルをWebでみつけることが簡単になってきたため、公開されているモジュールを組み合わせてシステムを作る「コピペプログラミング」が最近多くなってきた。コピペというと一般には良い印象が無いかもしれないが、初心者でも自力で新しいシステムを簡単に構築できるようになったことは喜ばしいことである。
米辻君が提案する「ecoMaki」は、公開されているモジュールを組み合わせることによって誰でも簡単に小説を作れるようにしようという面白いアプローチであり、ネタがあっても文章を書くのが苦手な人や、ネタも無いのに小説を書きたいと思う人が作品を作るハードルを大きく下げることが期待される。現存するコピペ的手法を充分活用し、誰でも簡単に物語を作成できるような環境を構築してもらいたいと考えている。