デジタル人材の育成
原田 康徳(日本電信電話株式会社 NTTコミュニケーション科学基礎研究所 主任研究員)
チーフクリエータ
直江 憲一(九州大学大学院 システム情報科学府 情報知能工学専攻 社会情報システム工学コース)
コクリエータ
中城 亮祐(九州大学大学院 システム情報科学府 情報知能工学専攻 社会情報システム工学コース)
本提案では、1つの記事に対してユーザ投稿型で多数の画像を集めるWeb図鑑システムを開発する。
Wikipediaは百科事典として膨大なテキスト情報を体系立てて集約しているサービスだが、画像情報を同じように体系立てて集約しているサービスは少ない。本システムによって、ユーザはあるトピックに対して投稿された多数の画像を自由に得ることができるようになることに加えて、写真の投稿や同定を行うことができる。Web図鑑システムはこれらの特徴を備えたWeb図鑑を任意の分野で作成可能にする。
ユーザひとりひとりが皆自由に、あらゆる画像情報を知識として共有できるメリットは大きく、学術的価値が特に高いという側面もある。紙媒体の博物学の図鑑、例えば魚類図鑑では、マダイというトピックに対して誰がどう見てもマダイだという代表的な画像が数枚程度掲載されている。これは種の同定を目的とした信頼性が求められているためである。しかし、本提案で実現する図鑑システムでは、1トピックに対して画像の質より量を求め、同じマダイであればマダイというトピックに対して数百数千の画像を集め掲載する。この膨大なデータベースは非常に高い学術的価値を持つ。魚類学の例でいえば、毎月のように新種の魚が発見・登録されている状況に即座に対応が可能となる。数百数千の画像を集めて並べてみると、その中から新種が発見される実例も多い。このように、情報更新のスピード感と膨大な画像情報の集積を両立するのは、紙媒体の図鑑では実現できるものでなく、そのプラットフォームはWeb上である必要がある。
こういったシステムのニーズがあるということは、Wikipediaの成功をみても明らかであるが、課題はこれが回りだすような仕掛けにまで持って行けるかどうかであろう。機能だけでみると、それほど難しくないシステムであるけれども、本当にきちんと作って、誰もが信頼できるようなシステムにして、世の中の期待に応えてほしい。