デジタル人材の育成
原田 康徳(日本電信電話株式会社 NTTコミュニケーション科学基礎研究所 主任研究員)
チーフクリエータ
小山 裕己(東京大学大学院 情報理工学系研究科コンピュータ科学専攻(修士課程)(五十嵐研究室))
魅力的な3Dキャラクタアニメーション(以下、アニメーション)を作るためには、作者が細かい部分まで「こだわり」を発揮することが重要である。そこで本提案では、簡単に「こだわり」を実現できるアニメーション作成システムを開発する。 アニメーションの作成にはスケルタルアニメーションと呼ばれる手法が一般的に用いられている。この手法は、ユーザがキャラクタのスケルトン(骨格)の動きを指定すると、それに付随してキャラクタの表面メッシュ(皮膚など)が動き、さらに髪の毛などの動きが物理シミュレーションによって生成されるというものである。
本提案ではスケルタルアニメーションの手法を用いてアニメーションを作成するが、特に髪の毛などの物理シミュレーションを用いて動きを生成する部分に対して、キャラクタの個性を表現する、つまり「こだわる」ことができる点が最大の特徴となる。
「こだわり」の実現方法としては、例えば
などに対して、それぞれキャラクタの個性を表す髪の毛などの形状を指定することによって、キャラクタの個性がよく表れたアニメーションを生成できるようにする。
本システムはフリーソフトウェアとしての公開を目指し、より多くのユーザを獲得できるようにする。本システムを用いて多くのユーザがそれぞれの「こだわり」を実現したアニメーションを作成し、YouTubeやニコニコ動画といった動画共有サイトへの作品の公開が発展していくことが期待される。
物理エンジンの普及により簡単にリアルなアニメーションが作れるようになったことで、逆に似たようなアニメーションが多くなってしまった。すべての計算をゆだねて簡単にリアルさが得られるがゆえに、ちょっとした修正でも不自然さが出てしまう。小山君の作るシステムは、計算方法だけでなく、こだわりを自然に指示することができるインタフェースの設計もまさに未踏の領域である。出来上がるシステムも楽しみであるが、それが普及したときの個性豊かなデジタルコンテンツで満ち溢れた世の中も楽しみである。