デジタル人材の育成

未踏IT人材発掘・育成事業:2012年度採択プロジェクト概要(大嶋PJ)

1.担当プロジェクトマネージャー

藤井 彰人(グーグル株式会社 エンタープライズ部門 シニアプロダクトマーケティングマネージャー)

2.採択者氏名

  • チーフクリエータ
    大嶋 泰介(慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科 エクスデザインコース)

3.採択金額

  • 1,792,000円

4.テーマ名

  • 材料の伸縮性を生かした材料加工および曲面造形システムの開発

5.関連Webサイト

  • なし

6.申請テーマ概要

近年、コンピュータ数値制御(Computer Numerical Control(CNC))によるミリングマシンやレーザーカッター等の板材を加工する工作機械が高精度化・低価格化し、広く教育機関や公共機関に普及しつつある。これらの工作機械の発達に伴い、dukta(ダクタ)と呼ばれる、板材をゴムのように柔らかくする加工法がある。ダクタはレーザーカッター等の切削機を用いて板材に特定のパターンを切削し、そのパターンによって材料の持つ変形特性をコントロールすることができる加工法である。本プロジェクトでは、ダクタによる加工を用いて数学的に定義された滑らかな曲線(パラメトリック曲線)をコンピュータ上で設計し、それを元に板材の”曲げ”を製造するための設計システムを開発する。設計システムは曲線の設計および、その曲線の”曲げ”を実現するためのダクタの切り込みパターンを含む図面を自動生成する。生成された図面をもとに加工機で板材を切り出し、それらの部材を組み合わせることで目的とする”曲げ”の実物モデルを簡単につくることができる。
現在産業に広く普及している板材を曲げる手法は、ある特定の”曲げ”をつくるための金型が必要であり、その型通りの曲げを短時間で大量に生産するものである。一方、本システムでは、設計者がコンピュータ上で描いた(ほぼ)任意の曲線元に、自由な曲げ加工を金型なしに瞬時に実現することができる。したがって、ある場所の周辺環境に適応した家具やインテリアや特定の個人にカスタマイズされたプロダクトなどを瞬時に誰でも簡単に実現することができる。さらに、綾線面(例えば螺旋構造の様な曲面)等の造形も本システムで実現する。最終的には従来の手法では実現不可能であった複雑な形態のプロダクトへ応用可能な設計システムを目指す。

7.採択理由

曲げ木を制作するだけでなく、その変形自由度にまで踏み込んだ、曲げ木設計システムに関する提案であり、一般的には木という変形困難な素材の可能性を飛躍的に高める提案である。
サンプルとして制作した曲げ木もとてもうつくしく、変形可能な木製材の発展性が感じられる。また、提案においてクリエータの本システムに対する情熱が感じられ、未踏プロジェクトとして採択するに相応しい提案であると判断した。