デジタル人材の育成
増井 俊之(慶應義塾大学 環境情報学部 教授)
チーフクリエータ
滝口 健太郎(工学院大学 情報学部)
分散コンピューティングプラットフォームのBOINCでは、今も地球外知的生命体探査・気候変動調査・新エネルギー開発・簡易地震計ネットワーク・タンパク質構造予測などの提案が今も行われている。
このように、人類の進歩のために依然として膨大な計算力が要求されているにも関わらず、計算力を得る対価は高いばかりなので、グリッドコンピューティングの敷居を下げる事で計算力の底上げをしたいと考えている。
BOINCは専用のソフトウェアをインストールしなければならないのが、敷居を高くしているのではないかと考え、そこで本提案ではWebの非同期通信を用いて、Webページを閲覧することでボランティアコンピューティングを実現する、Webアプリケーションのフレームワークの開発を行う。
自分のパソコンが何も仕事をしていないとき他人のために計算資源を提供するという仕組みが「SETI@home」のようなプロジェクトで利用されている。このような仕組みはもっと広く利用されると良いと思われるが、SETI@homeプロジェクトなどで自分のパソコンを利用してもらうためには自分のパソコンに特別なソフトをインストールしなければならないというハードルがあるため、こういったプロジェクトへの参加はあまりポピュラーになっていない。
滝口君は、このような「ボランティアコンピューティング」のフレームワークとして一般的なブラウザを利用する方法を提案している。最近のブラウザ技術を利用すると、サーバからの要求に応じてブラウザが反応することが可能になっているので、これを利用してブラウザに様々な計算の分担を依頼することができるというわけである。この方式を使うとユーザは特別なソフトウェアを用意する必要がないので各種の協調計算に応用が可能であるし、ユーザの意図的な行動も一種の計算として併用することができれば全く新しい計算機利用方法も考えられるだろう。
意図していないのに勝手にブラウザが使われるようでは困るので、セキュリティなどの面に考慮しつつ、様々な可能性を探してもらいたいと考えている。