デジタル人材の育成

未踏IT人材発掘・育成事業:2011年度採択プロジェクト概要(吉田PJ)

1.担当プロジェクトマネージャー

越塚 登(東京大学 大学院情報学環 教授、YRPユビキタス・ネットワーキング研究所 副所長)

2.採択者氏名

  • チーフクリエータ
    吉田 有花(明治大学 理工学部情報科学科)

3.採択金額

  • 1,792,000円

4.テーマ名

  • 身体動作の重畳表示による動画上での疑似ライブ感共有システム

5.関連Webサイト

  • なし

6.申請テーマ概要

今日の動画共有サイトでは、様々な場所で開催されるイベントを好きな場所・好きな時間に鑑賞できる。またコメント機能を用いて非同期にコミュニケーションをとれる環境も構築されている。
しかし、アーティストやDJなどのライブイベントにおいて、観客が体を動かしたり声かけをするいわゆる「ノリ」は、一体感を高めるとともに参加の実感を与える醍醐味ともいえるものである。それにも関わらず、これらの情報を非同期メディアで共有するような提案はこれまでなされていない。
そこで私は、動画の前に立つ観客の動きや歓声などを配信映像に重畳し、ライブイベントの「ノリ」を非同期メディアで共有できるシステム「身体動作の重畳表示による動画上での疑似ライブ感共有システム」を開発する。
本テーマでは、動画の新しいコミュニケーションシステムとして、動画の観客が体を動かし、その動きを可視化した情報を、異なる時間・空間から同一動画時間軸上に非同期に重畳するシステムを開発する。提案システムによって新たなメディアを構築し、観客自身が擬似ライブ感を得られるようにすることが目的である。
また、動画上でコメントを介したコミュニケーションがとれるニコニコ動画は、日本で開発された。最近になって英語版が公開され、多くの人に利用されている先駆的なシステムである。しかし、言葉の壁があり、日本語版と英語版との間でつながることは難しい。提案システムでは、観客の動きや歓声などというノンバーバルコミュニケーションを使用するので、言葉の壁を超えることができ、国境を超えることができる。英語版の開発も行い、Webサービスとして全世界に公開する。ニコニコ動画の発展、そして国際化が進みつつある昨今、このシステムは好意的に受け止められ、世界的に普及するのは早いと期待している。

7.採択理由

本テーマを採択した理由は以下の2点である。
本提案のクリエータ吉田有花さんは、本応募以前においても「うろおぼ絵17」や「モバスゴ!」などの実用化されているモバイル機器むけのエンターテイメントソフトを企画/開発を行なったり、様々なウェブサイトの構築を行なった実績を持っている。パイロットシステムや試作システムではなく、一般に利用可能なレベルの品質に仕上げる開発を行なっており、ここまでクリエータとしての実績を高く評価できる。
提案システム(サービス)の「身体動作の重畳表示による動画上での疑似ライブ感共有システム」は、所属研究室における研究と一体化した取組みで、そのアイデアに関しては既に学会発表などもこなしている。システムのアイデアはいまだ荒削りな部分はあるものの、机上の空論ではなく、自分の利用者感覚から発想されたと考えられ、地に足のついた企画として評価できる。未踏事業期間中に、更にアイデアを膨らましつつも、一般の人が使えるレベルの高い完成度のシステムを開発することが期待される。