デジタル人材の育成
石黒 浩(大阪大学大学院 基礎工学研究科 システム創成専攻 教授)
チーフクリエータ
川上 あゆみ(お茶の水女子大学 人間文化創成科学研究科 理学専攻情報科学領域)
植物を育てるという行為は広く一般で行われているが、うまく植物を育てることは意外に難しい。これは、植物の種類や状態によって、適切な世話の方法が異なるために、植物の育成経験が乏しい人にとっては、植物がどのような状態にあり、どのような世話をすべきなのかわかりにくいからである。
そこで本提案では、複数個の植木鉢型ロボットのふるまいを、それぞれの植物の特性や人の活動状況に応じて変化させることで、生活空間における人と植物の新たなインタラクションを提供する植木鉢型ロボット群:PotPetsを提案する。
本提案の目的は、人間と植物の新たなインタラクションを提供することで、従来の人と植物の関係性よりも密接な、新しい関係性を構築することである。
この目的を達成するために、提案者はすでに植物の状態をセンサで取得し、それに合わせて動作する植木鉢型ロボットPotPetを提案・試作している。現在までの試作では、植物の現在の状態を取得し、人に対しわかりやすく伝えることに着目し、実装を行ってきた。
本提案ではこれに加え、人や周辺環境に積極的に関わることに着目し、次の3点;1.植物の大きさや種類、2.人間の行動、3.家庭の中の状況、に合わせて各PotPetのふるまいを変化させる。生活空間においてより積極的に人に関わってゆくことで、人にとっては植物の存在を意識する機会が増え、世話をしやすくなる。植物にとっては、より細やかに人に世話を促すことができる。人に適切な世話を促すことで、植物の育成を支援にもつながる。
本提案では、特に「小型化など、外装(ハードウェア)のバリエーションを増やし、複数個試作すること」、及び、「 家庭内に設置したセンサから取得した人間の行動や家庭内の状況、各PotPetの植物の特性を考慮し、各PotPetに適切な動作を実装すること」を目標とする。
植木鉢をロボット化する試みは他に無い発想で非常に斬新である。
我々の日常生活において、植物が重要な役割を果たしていることは間違い無く、その植物がロボット化技術により、植物以上の存在として、我々の日常生活に関わる可能性を考えるとわくわくする。提案に至るまでの準備もかなり順調に整いつつある。
採択後は、さらに研究開発の速度を上げながら、単に移動する機構だけでなく、音や光による表現も取り入れることを検討してほしい。