デジタル人材の育成

未踏IT人材発掘・育成事業:2011年度採択プロジェクト概要(鵜飼PJ)

1.担当プロジェクトマネージャー

後藤 真孝(産業技術総合研究所 情報技術研究部門 上席研究員 兼 メディアインタラクション研究グループ長)

2.採択者氏名

  • チーフクリエータ
    鵜飼 佑(東京大学大学院 総合分析情報学コース修士課程)

3.採択金額

  • 1,792,000円

4.テーマ名

  • 伴泳ロボットを用いた水泳支援システム

5.関連Webサイト

  • なし

6.申請テーマ概要

本提案では、スイマーに追従して水中を自律的に航行する「伴泳ロボット」を利用し、水泳の支援を行うための基盤技術を開発する。
水泳は、世界中で一般的なスポーツである。日本には、小中学校やジム・フィットネスクラブを中心として4万数千ものプールがあり、競技としてだけではなくレクリエーションやリハビリテーションを目的として、多くの人々が水泳を楽しんでいる。しかし、プロのアスリートや部活動を行っている学生以外の一般のスイマーは、他者から指導を受けることが難しい。コーチ等の他者から指導を受けることができる環境にあったとしても、ひとりのコーチが同時に見ることができるスイマーは1人であり、指導時間は限られている。
多くのスポーツにおいて、自らのフォームに関する心的イメージを得ることは重要であると言われている。提案者は、小学校において水泳の授業補助を2年間続けている。その過程で、水中においては自らのフォームを他者の手を借りずに正しく認識することが大変難しいことを、身を持って体験している。そして、自らのフォームをリアルタイムに見る事が出来れば、しっかりとした指導を受けることができない数多くのアマチュアスイマーを支援することができると確信している。
本提案では、スイマーに追従して水中を自律的に航行する「伴泳ロボット」を利用し、水泳の支援を行うための基盤技術を開発する。特に本提案ではその一例として、先述した水中においてはフォームを自己認識することが難しい、という問題の解決を目的とした、泳いでいる自分が見えるセルフアウェアネス支援アプリケーションの開発を行う。
本提案で開発を行う伴泳ロボットは 既に開発済みの小型潜水艦ロボットをベースとして開発する。潜水艦ロボットにはカメラ及び、ディスプレイを備えたスレート型デバイスが搭載されており、これらを用いて適切な制御を行うことで、伴泳を実現する。本提案の開発により、伴泳ロボットを用いた水泳支援が実現され、スイマーは水中で自らのフォームをリアルタイムで確認しながら泳ぐことが可能になる。

7.採択理由

泳ぐ人(スイマー)に追従して水中を航行する「伴泳ロボット」を潜水艦ロボットとタブレットPCを利用して実現し、その上部のディスプレイを通じてスイマーに情報伝達することで、水泳支援を実現する提案である。
伴泳できるロボットのハードウェア・ソフトウェアを実装するだけでなく、「泳いでいる自分のフォームがわからない」という問題に対して、「泳ぐ自分がリアルタイムに見える」水泳支援アプリケーションを開発して解決し、実際に水泳指導の現場で利用して検証しようとしている点が素晴らしい。
鵜飼君は、自身が水泳が大好きなだけでなく、水泳コーチングの経験も豊富であり、そこでの実体験を動機とした説得力のある提案をしている点が魅力的である。
スイマーにきちんと自動追従する伴泳ロボットを作るだけでも困難は予想される。しかし、それらを早期に乗り越えた上で、いかに有用で本質的な水泳支援を実現していけるかを、さらにはより水泳を楽しくするにはどうすればよいのかを、充分な時間を割いて是非探求してもらいたい。フォームを表示するだけで満足せず、プロジェクト実施中に出てくる様々なアイディアも取り込んで発展させてくれるのが楽しみである。鵜飼君の持てる力をすべて注ぎ込んで、水泳の楽しみ方の未来を切り拓く気概を持って、野心的に展開してくれることを期待したい。