デジタル人材の育成
公開日:2024年6月28日
口腔内細菌と内科疾患、また口腔機能と老化・認知症との関連性が明らかになっており、口腔環境が高齢者の健康に密接に関わっていることが知られている。これらを予防するためには歯磨きをはじめとする「口腔ケア」が重要であるが、医療知識や経験の乏しい介護者だけでは、質の高い口腔ケアの提供が難しく、歯科医療従事者との関わりが必要不可欠である。しかし、歯科衛生士を中心とする歯科医療従事者の人材不足により、リスク管理が必要な要介護高齢者への口腔ケアは介護者のスキルに依存しており、90%以上の高齢者の口腔はケア不十分な状態で放置されている。
今後も高齢者の増加と医療ニーズの高まりが予想され、歯科衛生士を含む歯科医療従事者だけでは対応は困難となる可能性がある。この医療環境と社会動態の変化に対応するためには、介護を担う介護従事者も最低限の医療技能を習得し、社会やコミュニティレベルで高齢者を支援する体制を構築すること、また歯科医療従事者不足に対応するシステムの構築と、歯科医療従事者が持続可能な方法で活躍できるような働き方改革が急務である。
そこで、本プロジェクトは介護者が口腔ケア技能を習得するための教育システムの開発を行う。具体的には、高度なセンシング機能が搭載された歯科模型・歯ブラシシステムによって効果的なフィードバック機能の実現を目指す。また、遠隔での歯科医療従事者が介護従事者に対する指導を可能とするシステムを構築することによって、数が限られた歯科医療従事者でも多くの介護従事者に知見を広げることを可能とする。さらに、本プロジェクトにおける実証実験を通して得られた大量の指導データを分析し、全自動トレーナーを実現することで、広域的な口腔ケア教育システムの普及を目指した事業立案と推進を行う。
本プロジェクトでは、口腔ケア遠隔トレーニングシステムの開発を目指している。この目的のためには、力が計測可能な精巧な口腔模型と、この模型を用いたトレーナーの指導データとトレーニーの行動データを収集し分析する必要がある。これらは困難な課題であり、実現できれば高い未踏性を有するが、提案者らには詳細な接触情報や圧力情報を取得可能な高度なセンサ技術を持っているために、未踏ADV期間中に実用化につなげられるポテンシャルに期待し、採択とした。
2024年6月28日
2024年度採択プロジェクト概要(丸山・関根・奥田PJ)を掲載しました。