デジタル人材の育成
藤井 彰人(KDDI株式会社 執行役員 ソリューション事業本部 サービス企画開発本部長)
本プロジェクトでは、医療行為等による治癒状態を共有できるwebサービスの開発を行う。開発するシステムは以下の3つの要素から成り立っている。
まず、患者は治癒状態記録アプリに疾患名と身体状態について記録する。次に、スマートフォンのカメラを用いて自分の動作を録画しサーバにアップロードする。サーバ上で解析された結果は患者の治癒状態として自動的に記録される。記録された結果は設定されたプライバシー権限の範囲内でコミュニティに共有される。
初期のユーザは脳梗塞等を患い、運動療法リハビリを実施している患者を対象とする。運動療法における治癒状態は、既存の学会ガイドラインに則ったアンケート形式の指標と、スマートフォンのカメラやIoTセンサを用いた動作解析から判定する。継時的に測定された治癒状態を構造化し、同様の悩みを抱えた患者と共有するシステムを構築することが本プロジェクトの目的である。
将来的には「どのような患者が、どのようなリハビリをしたら、どれくらい改善したか」というデータを構造化することによって、患者の状態に合わせたリハビリメニューやアドバイスを提案することができるほか、リハビリ製品効果の測定やリハビリ専門職とのマッチングにも応用することができる。
本提案は、自宅でリハビリを行う患者のために、治癒状態を可視化し共有することで、効果の高い治療法を患者に提供するサービスの開発を目指すプロジェクトである。
高齢化社会の到来は不可避であり、健康寿命の確保は、日本が世界に先駆けて取り組むべき大変重要な社会的なテーマである。また、50代から増加する脳梗塞患者に対する保険外診療については、数多く存在するリハビリ業界から注目が集まっており、さらなる高度化が期待されている。
本提案は、リハビリを画像解析やセンサデバイスで可視化し、回復過程の効果を管理共有することで、リハビリの効率化だけでなくデータに基づいたプログラムの提案や、患者のモチベーションアップに繋げるサービスの開発を目指している。ITの活用が遅れているリハビリ業界に大きな変化をもたらしてくれることを期待したい。
加えて、提案者3名のうち、2名は未踏スーパークリエータであり、これまでに開発したリハビリサービスの基盤や、IoTデバイスを本サービスの土台として活用するであろうことが期待できる。さらには、国籍・海外経験豊富なチームであることからも、日本にとどまらないグローバルな視点でのサービス開発に期待したい。