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未踏IT人材発掘・育成事業:2019年度採択プロジェクト概要(松岡・伴野・松本PJ)

最終更新日:2019年6月28日

1.担当PM

  • 首藤 一幸(東京工業大学 情報理工学院 准教授)

2.採択者氏名

  • 松岡 航太郎(京都大学 工学部 電気電子工学科)
  • 伴野 良太郎(京都大学 工学部 情報学科 計算機科学コース)
  • 松本 直樹(京都大学 工学部 情報学科 計算機科学コース)

3.採択金額

  • 2,304,000円

4.テーマ名

  • 準同型暗号によるバーチャルセキュアプラットフォームの開発

5.関連Webサイト

6.申請テーマ概要

本プロジェクトでは、準同型暗号を用いたCPUエミュレーションにより、ハードウェア的に脆弱な環境でもセキュアな計算を行えるバーチャルセキュアプラットフォーム(Virtual Secure Platform)を開発する。ここで用いる準同型暗号とは、暗号文に対して暗号化されたまま演算を行うことができるような暗号のことであり、任意の論理演算を達成できることが知られている。バーチャルセキュアプラットフォームとは、ハードウェアによる特別な機能に頼ることなく、C言語など既存のコンピュータ向けプログラミング言語で書かれたプログラムをセキュアに実行できる環境を構成するプログラム群を指す造語である。

近年台頭するクラウドコンピューティングサービスにおいてユーザがプログラムを実行する際、ユーザは利用するクラウドベンダを信用することを余儀なくされる。本プロジェクトで掲げる理想は、ビットコインが「通貨」から「銀行」への「信用」を取り除いたように、クラウドコンピューティングおける「情報処理」から「クラウドベンダ」への「信用」を取り除き、真の分散コンピューティングを達成することにある。この理想実現の第一歩として、本プロジェクトでは、ユーザが暗号化したプログラムを、その暗号化状態を保ったままクラウド上の準同型暗号によるCPUエミュレーションで実行することを可能にする。

本プロジェクトでの主な開発対象として、次の3点を想定する。

  1. 準同型暗号での処理に適したCPUのアーキテクチャ
  2. 準同型暗号上でのCPUエミュレーションプログラムを生成するためのツールチェーン
  3. 当該CPUへのLLVMバックエンドの移植と準同型暗号での処理に向けた最適化

7.採択理由

通常のプロセッサが行うことのできるあらゆる処理を秘密計算してやろう、というプロジェクトである。つまりは、処理を例えばクラウドで行う際に、クラウド側には一切処理内容を知られずに、しかし処理はしてもらえる、ということである。

明日、あさって、すぐにどんな処理でもできるようになる、という種類のプロジェクトではないが、信用しなくても(あらゆる)処理を依頼できる未来を見せてくれると信じる。

更新履歴

  • 2019年6月28日

    2019年度採択プロジェクト概要(松岡・伴野・松本PJ)を掲載しました。