デジタル人材の育成

コラム:デジタル技術で実現可能な目的設定をおこなうビジネスアーキテクト

  • デジタル技術で実現可能な目的設定をおこなうビジネスアーキテクトコラム

Society5.0時代になり、我々は新たなデジタル技術を活用できるようになってきた。それはAI、ビッグデータ、そしてIoTなどのキーワードで語られることが多い。しかしながら、本質的には、これらは単なる手段であり、それ単独では大した意味を持たない。デジタル技術の価値は、これらを活用することでこれまでできなかったことが実現できるようになることである。Society5.0では、この新たな手段を活用してこれまでは実現できなかった価値を人間中心で生み出すことを目指している。

様々な活動を「目的」と「手段」と、手段を使って目的を実現する「仕組み」にわけて考える。図では、「目的」を丸、「手段」を四角、「仕組み(=アーキテクチャ)」を三角であらわしている。まずは、現在おこなわれていることを考える。例えば、“イベント出席者を管理する”という「目的」があるとする。以前は、紙に氏名を書いて提出していた。つまり、“紙とペン”という「手段」を使い、それらを“束ねる”という「仕組み」をつくることで、“イベント出席者を管理する”という「目的」を実現していた。単なるデジタル技術への置き換えでは、「手段」を“紙とペン”から、“オンライン”というデジタルの「手段」に置き換える。この場合には、「仕組み」も“電子的に束ねる”というふうに変更する必要がある。しかしながら、“イベント出席者を管理する”という「目的」はかわっていない。これではトランスフォーメーションではない。新たな「手段」としてのデジタル技術がある。これを「仕組み」に活用することによって、これまでは実現することができなかった「目的」を実現できるようになる。つまりDXとは、新たなデジタル技術を「手段」として活用する(「仕組み」に入れる)ことによって、これまで実現できなかった「目的」を実現できるようになることである。このときには、デジタル技術という「手段」を理解し、その技術を活用するからこそ可能となる「仕組み」としてのアーキテクチャをデザインすることで、デジタル技術なしでは実現できなかった「目的」を実現できるようになるのである。アーキテクトという言葉自体は、「目的」を与えられた上で「仕組み」としてのアーキテクチャをデザインする人をさしていた。しかし、現在では、デジタル技術を理解し、それを活用するからこそ実現可能なアーキテクチャをしった上で、実現可能な「目的」を考える必要があるため、アーキテクトに「目的」を決めることも求められる場合が多くなってきた。今後のデジタル人材は、デジタル技術としての「手段」だけでなく、「目的」と「仕組み」もデザインできる能力が求められている。

執筆者:ビジネスアーキテクトワーキンググループ主査 白坂成功

更新履歴

  • 2023年3月15日

    公開