デジタル人材の育成

株式会社JTBインタビュー

公開日:2025年5月14日

株式会社JTB グループ本社 ITセキュリティ対策チーム
ITセキュリティ対策担当マネージャー 三木 康義 様(左)
チームマネージャー 椎野 紘平 様(右)

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全員の情報処理安全確保支援士登録を目指し、チームとして受験料と更新料を補助

 株式会社JTB グループ本社 ITセキュリティ対策チーム チームマネージャー

当社は、100年を超える歴史の中でさまざまな事業変革を行ってきました。今で言う訪日インバウンドである外国人旅行者の誘致・斡旋に始まり、交通・宿泊券の代理販売、パッケージ旅行の開発・販売モデルとなった旅行代理店、そして2000年代以降は事業ドメインを「交流創造事業」にまで拡大し、お客様の課題解決に向けたソリューション事業へと進化しています。
そうしたすべての事業において、お客様情報など機微な情報を厳重に取り扱うことは、安心・安全な旅の提供と同じく当社の企業責任です。情報セキュリティの保持は、経営活動、業務推進、組織運営の一環であり、役員および全従業員の責務ととらえています。
その推進役が、我々「ITセキュリティ対策チーム」です。メンバー13名のうち、情報処理安全確保支援士の登録者は2025年4月現在、4名。メンバー全員の情報処理安全確保支援士試験合格・情報処理安全確保支援士登録を目指し、会社と協議のうえで2025年度より合格者の受験手数料は会社が、更新に必要な講習費用はITセキュリティ対策チームが補助することにしました。また、我々と連携するIT系の他のチームにも複数の情報処理安全確保支援士がいます。
当社ではIPAの実施している試験を多数活用しており、この内ITパスポート試験は全社的に受験が推奨され、情報セキュリティマネジメント試験では、我々のチームに着任した人には合格を求めています。この2つの試験についても合格者の受験手数料は会社が補助しています。情報処理安全確保支援士はこれらの上位資格として位置づけているということです。

登録者数の明示や名刺への記載により、お客様やITベンダーからの信頼性が向上

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情報処理安全確保支援士であることのメリットは数多くあります。まずは、情報セキュリティの専門家であることの証になることです。当社ウェブサイトでも登録者数を明示しており、お客様の信頼獲得につなげています。また、名刺に情報処理安全確保支援士のロゴマークを記載することで、ITベンダーからの信頼性も高まると感じます。当チームでは社内のITセキュリティ研修も担当していますが、その内容も高度化しており、自社業務にカスタマイズした動画を独自に作成して学習コンテンツとしているほか、不審メールの受信などを想定したインシデント訓練も定期的に実施しています。プラス・セキュリティの観点で、業務でしっかりとセキュリティ対策ができるよう支援しているわけです。また、我々が情報セキュリティの専門チームであると社内で認知され、多くの部署から相談が寄せられるようにもなりました。新たなシステムを導入する際など、事業企画や事業推進などのチームとのメンバー構成において、我々はセキュリティ・バイ・デザインを主導する役割を担っています。

資格更新の講習は「他流試合」。知識のアップデートにも役立つ

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また、情報処理安全確保支援士には資格更新の講習があることも重要な要素といえるでしょう。3年に1回の実践的な講習は、言うなれば「他流試合」です。情報セキュリティはその機密性からオープンな議論が難しいだけに、同じレベルの外部の方々と闊達に意見交換できることは大きなメリット。そうした議論を通じて当社のレベルを把握することもできます。また、年1回のオンライン講習も、情報セキュリティに関する法的知識などのアップデートに役立ちます。受講することでメンバーの情報感度も自然と高まり、当チームでは技術の勉強会、情報共有での刺激の与え合い、セキュリティレベルの底上げなど、相乗作用が得られています。そうした面においても、チームあるいは企業内で情報処理安全確保支援士登録者を複数養成することが重要だと考えています。また、資格を維持し、業務を長く続けることで、セキュリティ管理の質も向上します。例えば、以前はインシデントが発生した場合、被害を受けたPCを専門家に解析してもらうため、1~2週間は代替PCを利用せざるを得ませんでした。しかし現在では我々がインシデントに即応できるようになり、復旧にかかる日数は大幅に削減。再発防止はもとより、障害を未然に防ぐ対策を先手で打つなど、業務レベルも高度化しています。

1回合格しただけの人は“ペーパードライバー”。更新で真の実力を証明

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講習を受けることで情報セキュリティの守備範囲が広がる点も見逃せません。結果としてジョブローテーションがうまく回って柔軟な人材配置につながり、個人のキャリア形成にも恩恵をもたらします。当社は、高度な専門性で経営や事業に貢献するプロフェッショナル人財を「高度専門職」として定めており、例えば私(椎野)は、それまでの実績に加えて情報処理安全確保支援士であることもアピールした結果、この認定を受けることができました。さらに、情報処理安全確保支援士の資格は採用の指針の一つにもなっています。有資格者は情報セキュリティに関する一定の知識があり、それを維持し続ける努力をしていると判断できるからです。実際、有資格者は入社後も勤勉で、なおかつ情報セキュリティ以外の知識のアップデートにも意欲的。期待以上の活躍をしてくれています。1回合格しただけの人は、いわば“ペーパードライバー”。リスキリングを習慣化して、資格を維持し続けることが、本当の実力の証明になるのではないでしょうか。

経営と情報セキュリティが不可分の時代だからこそ、有能な人財の確保が急務

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情報処理安全確保支援士を目指す方には、自分の知識や市場価値を高めることができるので、ぜひトライしてほしいと思います。企業としても、経営と情報セキュリティは不可分の時代だからこそ、有能な人財の確保は急務でしょう。そのためにも情報処理安全確保支援士の受験手数料および更新に必要な講習費用を会社として補助することを検討してみてはいかがでしょうか。同時に、情報処理安全確保支援士が一定以上いる企業に維持費を助成したり、経済産業省のセキュリティ対策評価制度の指標に有資格者数も盛り込むなど、何らかの制度的な支援があるといいかもしれません。コロナ禍を経て人流が活発化し、地域行政や観光事業者、企業との共創も拡大しています。組織として可能な限りリスクを極小化することがお客様の安心、ひいてはJTBのブランドやお客様の実感価値につながることでしょう。当グループのセキュリティ推進役として、我々も知識やスキルにさらに磨きをかけていきます。