デジタル人材の育成

未踏IT人材発掘・育成事業:2022年度採択プロジェクト概要(皆川PJ)

最終更新日:2022年6月20日

1.担当PM

  • 五十嵐 悠紀(お茶の水女子大学 理学部 情報科学科 准教授)

2.採択者氏名

  • 皆川 達也(筑波大学大学院人間総合科学学術院 人間総合科学研究群情報学学位プログラム博士前期課程)

3.採択金額

  • 2,736,000円

4.テーマ名

  • 抜かない型を前提とした型設計支援ツールによる物作りの自在化

5.関連Webサイト

  • なし

6.申請テーマ概要

型成形技術とは、型に材料を流し込み、固め、取り出すことで所望する成形品を得る技術のことである。型成型技術は、大量・安価に成形品の生産が可能であり、材料選択の自由度も高いため、日常的に使うプラスチックや金属、シリコンなどでできた数多くの製品の製造に用いられている。

しかしながら、成形品は型から抜けなければならないという強い製造上の制約を持つため、ユーザがCAD(Computer-Aided Design)ソフトウェアを用いて作成したモデルを型から抜けるように形状を編集することが必要不可欠である。また、型から抜くという制約以外にも「充填不足」、「収縮や気泡」、「溶着不良」などの成形不良の問題があり、作成したモデルの検証をコンピュータ上で行うことが困難でもある。

そこで本プロジェクトでは、これらの問題に対する新しいアプローチとして、抜く以外の方法で型自体を除去する仕組み「抜かない型」を、型から抜くこれまでの型成形技術に導入する。これにより、型成型における製造上の形状に対する制約を緩和し、従来、3Dプリンタでのみしか製造できないとされてきたラティス構造や機械機構などといった構造物を、安価に量産可能にする。

具体的には、まず、目的の成形物を「抜く型で造形する部分」と「抜いた後に除去をする部分(抜かない型)」に分け、「抜かない型」自体を型成形で造形する。そして、それと「抜く型で造形する部分」の型と組み合わせて造形したものから「抜かない型」を除去することで、従来の型では製造不可能な形状の造形を可能にする。

この「抜かない型」を前提とした型成型技術を誰しもが簡単に利用できるようにするためには、本技術専用のCADソフトウェアとCAE(Computer-Aided Engineering)ソフトウェアが必要不可欠である。そのためにまず、入力された成形品の形状に対する型を生成するための設計支援ツールを開発する。

次に、成形品の作成の際に熟練の技術者の暗黙知をユーザが利用できるようにする機能を開発する。例えば、成形不良が出た際に、現在のパラメータと成形不良の概要を入力することで、原因や改善点を絞り込めるようにする機能や、「抜かない型」を利用することで一体成形が可能となる具体的な機構を蓄積し、ユーザがそれを参照・利用できるようにするライブラリなどを実装する。

7.採択理由

従来の型成形では抜くことができる形状でなければいけないという制約があったが、本プロジェクトでは、入力された成形品の形状に対する型を「抜かない型」としてデザインする設計支援ツールを開発する。

また、成形品の作成の際には、熟練者が利用している暗黙知を利用した支援をすることで、初心者でも成形不良を起こさないようなデザインを可能にする。

ものづくりが好きな提案者は、これにより型成形における従来の制約を緩和し、従来職人芸とされていた型成形技術における技術革新を起こすことを目指したいと言う。その情熱に期待して採択とした。

更新履歴

  • 2022年6月20日

    2022年度採択プロジェクト概要(皆川PJ)を掲載しました。