デジタル人材の育成
首藤 一幸(東京工業大学 大学院情報理工学研究科 数理・計算科学専攻 准教授)
チーフクリエータ
齋藤 暢郎 (九州工業大学大学院)
本プロジェクトでは、タッチデバイスにおけるユーザの操作ログの収集、分析、可視化を行うシステムを開発する。また、本システムを用いて操作ログを解析することで、以下のような目標の達成を目指す。
定量的なUIの評価手法の発展
今日、Google Analyticsをはじめとする、画面遷移のログを元にユーザインタフェース(以降UIとする)を定量的に分析・評価する手法が存在する。しかし、画面遷移のログの分析では、結果として画面遷移の状態からUIに問題があるという事は指摘出来るが、何に起因するのか、またその対案は如何なるものであるかという提案に直接結びつけることは出来ない。既存の分析・評価手法に本システムを組み合わせることで、より詳細な議論が可能となる状況を目指す。
機械学習を組み込んだUIの最適化
操作ログを分析することで、ユーザの操作ミスや特性などを加味したUIの最適化機能の実現を目指す。例えば、より多く利用するボタンを、より触れやすい場所に設置する、クリティカルなボタンを遠くに設置する、あるいは利用状況に応じて当たり判定を変更するなどのアプローチが考えられる。操作ログを収集しているアプリケーションにおいては、ジェスチャーの閾値を動的に最適化する機能が考えられる。
ユーザ操作を使った生体認証システム
認証システムにおいては、ユーザ認証をするためにユーザがデバイスを操作する時間が必ず発生するが、例えばデバイスロック/ロック解除等の軽度なユーザ認証においては、認証そのものを意識させないような設計が、より良いユーザエクスペリエンス(以降UXとする)に繋がると考えられる。本システムを用いてユーザの操作ログを解析し、その特徴を抽出、定義することで、普段のユーザ操作自体がユーザ認証となり、常にユーザ認証し続ける形の生体認証システムの確立が考えられる。
スマートフォン・タブレットなどのアプリケーション上でタッチ操作がどう行われているか、それを記録・蓄積・分析する手法とソフトウェアを開発するという提案である。これによって、アプリケーションの使いやすさ、ユーザインタフェースを改善できる。また、この成果物の先には、ユーザ特性の推定、インタフェース評価手法そのものの研究といった発展もある。
齋藤君はこれまで、あるアプリケーションを対象として操作記録を保存する機能を開発し、運用してきた。これを発展させ、分析プラットフォームとしていく。事実上標準の座を獲って欲しい。