デジタル人材の育成
首藤 一幸PM(東京工業大学 大学院情報理工学研究科 数理・計算科学専攻 准教授)
チーフクリエータ
塩川 浩昭(筑波大学大学院 システム情報工学研究科)
コクリエータ
なし
近年、映像ストリームは研究室を出て実社会で用いられる例が顕在化している。特に従来は商店や銀行などの限られた場所でのみ設置されていた監視カメラは、防犯意識の高まりから市街や道路などで多く見られるようになった。このような監視カメラを用いた監視システムは、プライバシ侵害という難しい問題も孕むが、システムとして実社会に存在し、さらに拡大していることから、技術として社会に求められていることは疑いの余地がない。
ところが、監視システムは多数の監視カメラから時々刻々と生じる映像ストリームに対して、人間が映像を目視することで異常検出を行っている。そのためこのような監視システムは、「人的なコストが高い」、「見落としにより正確な異常検知ができない」などの問題を有する。これらの問題に対する解として、画像処理やパタン認識処理により異常検出を行う監視システムが用いられることがあるが、このようなシステムの実装には、複雑なコーディングが不可欠であるため、その開発コストは大きなものになると考えられる。さらには、監視システムは導入環境により監視カメラ台数やネットワーク構成などが異なるため、特定環境に特化した専用システムを作りこむ必要がある。ゆえにシステムの汎用性は低く、監視カメラ台数の増加といった特定環境から少しでも異なる環境においては、監視システムが停止してしまう可能性がある。このような場合、システムを再開発することになり、開発コストがさらに膨れ上がるという問題が生じる。
本提案では、監視システム開発のための汎用映像ストリーム処理基盤Eagle Eyeを開発する。Eagle Eyeではストリーム処理エンジンの技術を応用し、SQLライクの問合せを記述による画像処理・パタン認識を実現する。
多数の映像ストリームを処理(例:○○さんが現れた)する基盤ソフトウェアを開発して、使えることを実証するという提案である。映像ストリームに対する処理(問い合わせ)を宣言的に書けることや、分散処理で処理性能を稼げる点が特徴である。
基盤ソフトウェアの開発自体は大学の研究室のバックアップで強力に推進されている。未踏ユースでの取り組みは、本当に使えること、様々に応用できること、様々な映像処理を簡単に試せることなどを示すこととなるだろうか。
売り込み先を意識してか、応用例として人の監視を挙げているが、監視にこだわらず、明るい気持ちになれる応用も模索して欲しい。天体観測、動物観測、交通流調査、スポーツの試合解析、また、人の動きを撮影するにしても、身長推定、男女推定…など、前向きな応用が考えられるだろう。また、ネット越しにある程度の映像ストリームを集められる現状を踏まえると、カメラを自分たちで設置することにもこだわらなくてよいのではないか。日本ではまだマイナーな(?)ストリーム処理の価値を世に知らしめて欲しい。