デジタル人材の育成

未踏IT人材発掘・育成事業(本体):2009年度下期採択プロジェクト概要(小林PJ)

1.担当プロジェクトマネージャー

夏野 剛(慶應義塾大学 政策・メディア研究科 特別招聘教授)

2.採択者氏名

  • チーフクリエータ
    小林 悟史(東京大学大学院 情報理工学系研究科 技術補佐員)

  • コクリエータ
    前田 高宏(フリーランス)

3.未踏プロジェクト管理組織

  • コシキ・バリューハブ株式会社

4.採択金額

  • 7,000,000円

5.テーマ名

  • オープンソースソフトウェア指向型作曲支援プラットフォームの開発

6.関連Webサイト

  • なし

7.申請テーマ概要

音楽業界は古くから曲(CD、オンライン配信)を消費者にBtoCで販売するビジネスモデルを続けているが、YouTubeやニコニコ動画を初めとするコンテンツ配信サイトの登場も一要因となってか音楽業界の市場規模(楽曲売上などの指標)は縮小傾向にあり、このマーケットでのプレイヤーの未来は新古問わず厳しいものであることは想像に容易い。
これに対してニコニコ動画などではユーザ同士が投稿作品を改変し合い、よりよい作品が生まれ、商業化に至る事例も発生している。

このように「みんなで音楽を創り上げる」という流れは、ソフトウェア開発の世界で広く普及している「オープンソース・ソフトウェア」の概念や開発スタイルに似ている考え、提案者らは音楽業界に訪れたこの流れを「ソーシャル・コンポジション」と分析・命名しここに音楽業界の新しい可能性と大きなビジネスチャンスが含まれていると感じた。

本未踏プロジェクトにおいて提案者らは、「みんなで音楽を創り上げていく」ために、曲をオープンソース・ソフトウェアのように作曲できる作曲支援プラットフォームを提案する。
ユーザーはプラットフォーム内にて作曲プロジェクトを立ち上げ、複数人で楽曲のソースコードとなる楽譜データを編集(コミット)する。
これらは作曲スタイルに適した形でバージョン管理され、最後に演奏・レコーディングを行い曲を配布する。
この時に楽曲、および楽曲の一部にライセンスを付与することを可能にし、ライセンスの許す範囲内で流通・再利用が可能な仕組みとする。

このような作曲基盤を実現することにより、「みんなで創り上げられた音楽」が広く世に浸透し、音楽業界に新たなパラダイムシフトを起こすシステムを提案する。

8.採択理由

近年のユーザー主導型コンテンツ生成を、作曲の世界にまで持ち込もうという意欲的な提案である。実現性も高く、市場へのインパクトもあるものであり、興味深い。停滞感のある音楽業界をIT化によって再活性化させる可能性を秘めており、採択したい。