デジタル人材の育成

未踏IT人材発掘・育成事業(ユース):2008年度下期採択プロジェクト概要(篠原PJ)

1.担当プロジェクトマネージャー

  • 安村 通晃(慶應義塾大学 環境情報学部 教授)

2.採択者氏名

  • チーフクリエータ:篠原 祐樹(明治大学理工学部情報科学科)
    コクリエータ:なし

3.未踏ユースプロジェクト管理組織

  • 株式会社メルコホールディングス

4.採択金額

  • 3,000,000円

5.テーマ名

  • 不可能立体の表現が可能なCG制作環境の開発

6.関連Webサイト

  • なし

7.申請テーマ概要

オランダの画家M.C.Escherは「一見作れそうであるが,実際には作ることが出来ない」不可能立体をモチーフとした作品を数多く発表している.
本提案では,このような不可能立体が含まれるCGを手軽かつ本格的に制作できるシステムの開発を行う.CGに限らず画像を作る目的は何らかの情報や感情を他者に伝達することにあり「ありそうで、ありえない」という特異な印象を見た者に与えることの出来る不可能立体の映像は,芸術表現や広告デザインなど多くの分野で効果的に利用できると考えられる.従来も線画に関する不可能立体の研究などは多く存在したが,「実際に存在するように見えて,実は存在し得ない」という矛盾・違和感にこそ不可能立体の面白さがあり,そういった印象をより強く与えるために,もっと写実的で「実際に存在するよう」に見せる必要があると私は考えている.すでに,不可能立体を写実的に表現した作品は多く発表されているが,これらの作品は高い技能を有するクリエイターが画像加工を行うことで制作してきた.
私は,このような「プロの業」を用いなくても一般ユーザが簡単に不可能立体の表現を行うことのできるシステムを提案したい.また,そのシステムの出力は線画や簡単なシェーディングによる画像ではなく,レイトレーシングを用いて生成したより写実的なものとする.

8.採択理由

既存の3次元CGは、現実物をできるだけ忠実にモデル化し、仮想空間内に表現しようとする物であった。今回、篠原君が提案する物はこれとは逆に、現実世界ではあり得ないような物を3次元CGとして表現しようとする物で、非常にユニークである。
アートの世界では、エッシャーの絵というのが知られている。エッシャーは、どこまでも上り続ける階段とか、水が流れてはいるがいつの間にか元に戻っているような絵を描き続けてきている。これは一般には2次元で立体を描いているので、人間の視覚的な錯覚を利用しているので可能になる。
3DCGで同じ様なことをソニーCSLの大和田氏が試みており、篠原君の提案との違いが気になることではあるが、大和田氏は線画レベルで、今回の篠原君のものは、面のレンダリングまで含んでいる点で大きく異なっている。
すなわち、篠原君が開発しようとしている物は、不可能立体を3DCGとして実現するためのツールである。
基本的な処理の一部は動き始めており、未踏期間中には完成は間違いないと思われる。基本機能を完成させるだけではなく、利用者にとって使いやすいツールにして欲しいことと、不可能物体らしい見せ方の工夫や、面白い作品を集める仕組みなどについても、留意しながら開発を進めて欲しい。また、4月から就職と言うことなので、開発のペース配分をよく考えて欲しい。