デジタル人材の育成
チーフクリエータ:時崎 崇(電気通信大学大学院電気通信学研究科 知能機械工学専攻)
コクリエータ:なし
3DCGキャラクタに対する自然なモーションデータをアニメータの力を借りずに自動生成するソフトウェアを開発いたします。
自然なモーションを自動生成するには、
といった生物の身体的な自然さが実現できた上で、
を解決する必要があります。
これらに対し私の提案では以下の解決策で対処します。
まず、物理的自然さを確保するためにリアルタイム物理シミュレータを用います。
これにより力の働きをモーションに反映させることが可能になり、身体の干渉や転倒が扱えるようになります。
次に、身体的自然さを確保するために物理シミュレータ上で関節可動域の指定や、関節トルクの制限を行えるようにします。
これにより、可動域外の姿勢をキャラクタが取ることは無くなり、また関節は指定された以上の力を出すことはできなくなります。
解を探す問題にはGAと強化学習を用いた広大な状態空間における効率的な探索方法を用いて解決を図ります。
GAには広大な状態空間から、動作を行うために必要な状態空間を抜き出す役割があり、強化学習には抜き出された状態空間で最適な動作を獲得する役割があります。
この時、強化学習をする上で物理シミュレータ上で軌道追従制御を行うことにより、動力学的な状態の一意性を確保し、解の発散を防ぎます。
これらを用いる事で自動生成されるモーションは物理的整合性と身体的制約を兼ね備えているため、本物の生物のような動作が出てくると期待できます。
これまでの未踏ユースでもキャラクタモーションの話はいくつかあったが、時崎君の提案はそれらの中で最も本格的なものだろう。つまり、非常にかっちりした力学モデルに基づく物理計算を使った本格的なモーション生成である。3次元お絵書きとは違う世界である。3次元ゲームは所詮仮想世界なので、お絵書きだと割り切ってしまう考え方もあろうが、人間の感性は簡単にごまかせるものではない。ここで提案されているような縁の下の作業を積み上げていかないと、本当の意味での「迫力」は出ない。
本格的であるだけに乗り越えるべき技術課題の難しさも大きいと思われる。たとえば、筋力の妥当な最大値や関節可動範囲といった身体的制約をきちんと考慮するとか、同じ関節角度でも走っているときと、歩いているときとかでは「勢い」が異なるので、物理シミュレーションに必要なパラメータが増え、解の探索空間が膨大になるという技術課題である。これらに対して提案の段階である程度のメドは立っていると見たが、実際にどこまでいくかは予断を許さないような気がする。
そういう意味で挑戦度の高いプロジェクトである。時崎君の頑張りに期待したい。関連実績が積み上がっているので、底力は十分にあると思う。