デジタル人材の育成

未踏IT人材発掘・育成事業(ユース):2008年度上期採択プロジェクト概要(水谷PJ)

1.担当プロジェクトマネージャー

  • 竹内 郁雄(東京大学大学院 情報理工学系研究科 創造情報学専攻 教授)

2.採択者氏名

  • チーフクリエータ:水谷 后宏(奈良先端科学技術大学院大学 情報科学研究科情報システム学専攻博士前期課程1年 インターネットアーキテクチャ講座)
    コクリエータ:なし

3.未踏ユースプロジェクト管理組織

  • 株式会社オープンテクノロジーズ

4.採択金額

  • 2,630,000円

5.テーマ名

  • Programmable-OverlayNetworkの開発

6.関連Webサイト

  • なし

7.申請テーマ概要

本提案では、ProgrammableなOverlayNetworkの構築を可能とするミドルウェアを開発する。ここでのProgrammableとは「設計可能」という位置付けで、Programmable-messageと呼ぶ制御メッセージの伝搬・解釈により、OverlayNetwork上の各ノード間のトポロジー・ルーティング、コンテンツの分散などを開発・管理・運用することが可能となる。このProgrammable-OverlayNetworkは以下の2つの機能を持つ
1.全体化
Programmable-messageをOverlayNetwork上の各ノードに伝搬させることにより、各ノードではProgrammable-messageの内容に従った振る舞いを行う。これにより、OverlayNetwork全体のルーティングアルゴリズム・トポロジー・コンテンツ分散の方法を、OverlayNetworkの動作を停止させることなく、いつでも変更可能となる。
2.局所化
Programmable-messageを、目的のコンテンツ・ノードに対して、リクエストする際に付加することにより、目的のコンテンツ・ノードへのアクセスに、局所的なルーティングアルゴリズム・トポロジーを適用することができる。これによって、OverlayNetworkの全体的なルーティングアルゴリズム・トポロジーの変更時の予期せぬ動作を、局所的に検証することが可能となる(テストリスクの軽減)。
以上の要件を満たす本提案では、「OverlayNetwork」の開発支援だけでなく、分散アプリケーション(例P2Pアプリケーション)の開発・管理・運用も可能になる。

8.採択理由

現在、アプリケーションごとにChordなど、いくつかのオーバーレイネットワークが独立して存在しているが、アプリケーションを止めることなく、いつでも変更できるようなオーバーレイネットワークにするために、第7層でのいわば仮想ルータをメッセージ伝播によって必要なホストにインストールしていくという考え方は興味深い。でも、じゃあ、実際このシステムをどういうところで使うんだという問いに、より多くの人を納得させる答えも用意してほしい。
水谷君はいかにもプログラミング能力が高そうな面構えだ。実際、とある実験でSkypeもどきのシステムを2週間でつくり上げてしまったという。物理学の統一原理に感銘を受け、オーバーレイネットワークでもそのような統一原理を目指したいという彼の主張には、なんと無理矢理な、とちょっとびっくりしたが、そういう大掴みな物の見方を裏付けるしっかりした基礎力と精神的体力(?)があると見た。それに水谷君自身、なによりも元気がいい。GPLで出したいと頑張っている。
けだし、これは19年度I期にスーパークリエータになった西川賀樹君のシステム(分散システムの開発を支援するテストベッド)と関連が深い。西川君のはシミュレータだが、水谷君のは実機ネットワーク上で動作するシステムだ。2人はぜひ仲良くなってほしい。