デジタル人材の育成
松原 健二(株式会社コーエー 代表取締役執行役員社長COO)
チーフクリエータ
青木 俊介(東華大学信息科学技術学院)
コクリエータ
鷺坂 隆志(東京大学大学院 情報理工学系研究科 知能情報システム研究室)
コクリエータ
松宮 孝大(フリープログラマ)
「目玉型アンビエント・ロボティック・メディア」とは、ゲームシステムのためのロボット化されたメディア・デバイスである。
ディスプレイの前に縛られている、エンターテイメントソフトウェアを解放したい。ロボット化されたインターフェースを通じて、もっと環境の情報を取り込めるようにしたい、人間の気配を感じさせたい、そしてユーザーに対して言語や音声・ヴィジュアルを使わない情報を与えられるようにしたい。
本提案では、これらの機能を実装することで、エンターテイメントソフトウェアが新しい種類の面白さを開拓する、プラットフォームの1つを実現したい、と考えている。そして同時に、このデバイスを利用するためのライブラリの整備と、ゲームの開発を行いたい。
このデバイスは、環境をセンシングするためのアンビエント・センサ類と、ロボット型メディアとして、心理的情報のメディアとなる目玉型ロボットから構成される。
従来より、人間同士の(あるいは人間とペット間の)コミュニケーションにおいて、言語以外の情報として視線の動きが人間に多くの心理的効果をもたらすことが知られている。目玉型ロボットでは、この「視線」という機能のみを抽出し、ゲーム側から自由に操作することを可能にする。このデバイスにより、ゲームシステムに新しい表現方法をもたらすことを狙っている。
今まで、PCや据え置き型のゲーム機を使ったゲームシステムでは、ディスプレイをつけ、その前に座っていないと遊ぶことができなかった。しかしながら、アンビエント・ロボティック・メディアを搭載することで、室内であれば場所に縛られることなく、コントローラーにも触れずに、他の日常作業をしながらでも自然にゲームを楽しむという新しい遊び方を可能にする。これにより、ゲームの楽しみを広げるのみでなく、日常生活のなかで環境を意識する機会を増やし、普段使わずに忘れてしまっている野生的な感覚を取り戻させたい、というのが作者らの目的である。
センサーを用い、ディスプレイに依存せずにコンテンツの面白さを表現しようとするシステムは、従来の家庭用ゲーム機にないエンターテインメント性を提供できる。
目玉型ロボットのハードウェア開発、コンテンツ開発を可能とする基盤ソフトウェア開発、デモコンテンツ開発がバランス良く組み合わされている提案と評価する。