デジタル人材の育成
安村 通晃(慶應義塾大学 環境情報学部 教授)
チーフクリエータ
矢田 裕基(明治大学 理工学部情報科学科)
コクリエータ
なし
近年、独特なインタフェースと楽しくインタラクションしていくうちに音楽ができあがっていく作曲ツールが登場してきた。
それらは、演奏中に LED の発光によるパフォーマンスが行えたり、タッチパネルを積極的に採用されたりと、そのインタフェースデザインにおいても使いやすさよりは直感性や楽しさが重視されているようにみえる。
これらのツールによる作曲・演奏プロセスは出力される音と操作の関係が視覚的に見えるため鑑賞者にとっても楽しい。
一方、計算機の性能向上にともない、最近は物理演算を使ったインタラクティブなコンテンツが増えてきた。
これらのコンテンツは、直感的に物体を自由に配置したり動かしたりすることができ、慣れてくると複雑な動きをする物体も作成することができる。
それは、見ているだけで楽しい仕掛けを構築するにとどまらず、独自のゲームや8bitの計算機まで作ってしまうことすら可能である。
意図通りの動作を行う系を構築するのは困難だが、その困難さゆえにうまく動作させられたものは喝采を得るし、それは視覚的に関係が見えやすいからこそであると考えられる。
そこで、私は、この二つを組み合わせ、ユーザが物理演算による作品を作りつつ、音楽を作ったり奏でることのできるツールを作ることができるシステムを提案する。
物理演算に従ったオブジェクトの動きとその衝突によって音を出そうという非常に興味深い提案である。
繰り返し、早送り、逆戻しなども可能となっている。どちらかというと、偶然性を利用するのに近い方式なので「作曲」とは呼ばない方が良いのではないか。もし「作曲」ということに拘るのならば、望みの音がきちんと出せるかとか、リズムがちゃんととれるのかなど、多くの課題が残り、それを未踏期間中にクリアできるかどうかが厳しいように思う。
つまり、「作曲」を全面に出すのではなく、物理法則に伴ったオブジェクトの動きや衝突から、心地の良い楽しい音楽がどれだけ出せるか、ものの動きとそれに伴う音という視点で、開発を行なうのが良いと思う。ただ、意外性だけでは不十分であり、音楽として、あるいは、音として充分楽しめるレベルにまでもっていって欲しい。
システムをある程度動く段階に早めにもっていき、自分以外の人にも「作品」を作ってもらい、成果報告会には、その中の優れた作品をいくつかお披露目してもらいたい。結果の作品をWeb上に残す仕組みも考えておくと良いであろう。