デジタル人材の育成
首藤 一幸(東京工業大学 大学院情報理工学研究科 数理・計算科学専攻 准教授)
チーフクリエータ
古谷 楽人(株式会社グルコース/株式会社UIEジャパン)
コクリエータ
なし
2010年度より日本でも太陽光発電による余剰電力を電力会社が固定価格での買取る事を義務づけるフィードインタリフ制度が開始される。資源を持たない我が国にとって、21世紀も高い成長を続けていくには、再生可能エネルギーの有効活用が欠かせないが、一箇所で発電された電力を需要家の元に届けるべく設計された現在の電力グリッドでは、出力が不安定で地理的に分散した再生可能エネルギーを組み込むのが難しい。
再生可能エネルギーを組み込んだ次世代グリッドを実現する要素技術を開発し、家庭内に設置したディスプレイを中心としたエネルギー管理ソリューションを開発し、ディスプレイセントリックなエネルギー管理システムを提案する事を当プロジェクトの最終目標とする。
次世代グリッドに位置づけられるスマートグリッドを実現する要素技術には、リアルタイムでの電力計測を可能にするスマートメーター、電力グリッドと連動して出力負荷の制御を行うデマンド・レスポンスプログラムに対応したスマート家電の普及、余剰電力の売買や割安な深夜電力の購入予約、デマンド・レスポンスプログラムによるピークシフトの制御など家庭内のエネルギーマネージメントを行うエネルギーマネージメントシステムが含まれる。
当プロジェクトでは、スマートメーター、タッチパネルベースのコンピューター上で動作するエネルギー管理システム、スマートメーターにより計測された電力を記録する自動検針サーバーの3つのシステムを開発し、エネルギーインターネット革命において21世紀の日本が世界をリードできる存在になれるよう貢献したいと考えている。
家庭や小さなオフィスにて電力消費量を計測、集計し、その情報をもとに家電等を制御しようという提案である。長い目で見れば、スマートグリッド(ネットワーク化された賢い電力制御網)の重要な構成要素という見方もできる。
審査の過程では、方式は既知なのでその意味でのチャレンジはない、企業の中でやるのが素直では?未踏ユースよりももっと大きな予算が要るのでは?といった、未踏ユースの中で取り組むことの意義を問う意見もあった。確かに、個人や小さな事業者が参入するのはとても難しい事業領域であろう。しかし提案者は、入り込んでいくための作戦も具体的かつ現実的に考えており、また、提案内容の長期的な意義や価値についての考察もしっかりと行っているように見受けられた。
提案者は、産業界に切り込んでいこうという強い意志を持ち、また、その実現のために現実的な動きができるという意味では、すでに稀少な人材である。どこまでできるか、大変期待している。