デジタル人材の育成

未踏IT人材発掘・育成事業(ユース):2009年度上期採択プロジェクト概要(上平PJ)

1.担当プロジェクトマネージャー

筧 捷彦(早稲田大学 理工学術院基幹理工学部 情報理工学科 教授)

2.採択者氏名

  • チーフクリエータ
    上平 拓弥(山梨大学大学院 医学工学総合教育部 組込み型統合システム開発教育プログラム)

  • コクリエータ
    なし

3.未踏プロジェクト管理組織

  • 株式会社創夢

4.採択金額

  • 3,000,000円

5.テーマ名

  • 聞き耳インタフェースを採用した患者情報管理システム

6.関連Webサイト

  • http://www.alps.cs.yamanashi.ac.jp/~kami/

7.申請テーマ概要

近年、医療ミスが社会問題となっている。医療ミスの原因は多々考えられるが、業務の煩雑さやIT化の遅れ、情報端末操作の不慣れ等もその原因として指摘されている。そこで、病院等の医療機関において、データベース化した患者情報に誰でも簡単にアクセスできる入力インタフェースを備えた患者情報管理システムを提案する。

患者情報のデータベース化は別段新しいことではない。電子カルテシステムが普及し始め、多くの大病院に導入されている。現在では音声入力インタフェース(音声入力による情報検索)も提唱されている。しかし、導入に膨大な予算が必要であること、高齢な医療スタッフが上手に端末を操作できないことを理由に、普及が進んでいない。

本提案システムが既存の電子カルテシステムと異なる点は、情報機器の操作が苦手な人でも簡単に、素早く必要な情報アクセスを実現できる直観操作型入力インタフェースを備えていることである。その直感操作型入力インタフェースに「音声入力」と「タッチパネル入力」を利用する。それぞれの入力モーダルの特徴を上手に融合することで、最適な操作環境をユーザに提供し、業務効率アップに役立つはずである。

音声入力インタフェースは、カーナビを始めとする多くの情報機器に搭載されている。しかし、認識性能があまりにも悪いこと、機械に向かってしゃべる抵抗感からかほとんど利用されていないのが現状である。既存の音声インタフェースと異なり、提案する音声入力インタフェースでは、ユーザはコンピュータを意識せずともよく、音声認識誤りがあっても(もちろん誤りを軽減する手法も提案するが)ユーザにはあまり気にならないものである。これは既存の問題点を克服するもので、音声入力インタフェースの普及にも繋がるのではないかと考えている。

開発したシステムは、病院での実証試験を行うことで、本当に病院業務に効果があるのか、どんな人でも使いこなせるのか等を確かめる予定にしている。

8.採択理由

研究対象としている音声技術の応用として、忙しく立ち働く病院現場の人たちの手助けとなるシステムを作りたいというのが動機のプロジェクト。手が塞がっていても、声で名前・日付・時刻・数値などを発することで、システムがそれを聞き取って候補を絞り込んでくれるようにするのが目標である。

特定の専科病院を対象にして、夏休み中に患者リストをDB化し、電話受付のオペレータの応対に"聞き耳"を立ててDBから可能性のある候補を絞り込んで表示するインタフェースをもった受付対応支援システムを作る。類似の先行研究もあるし、音声認識技術からすると名前や数値の認識は決してたやすくはない。しかし、学んでいることがらを現実の場に活かすのだという高い意識をもっているので、現場に役立つ実際的なシステムにまとめあげてくれるに違いないと見込んでの採択である。