デジタル人材の育成

未踏IT人材発掘・育成事業:2011年度採択プロジェクト概要(春日PJ)

1.担当プロジェクトマネージャー

後藤 真孝(産業技術総合研究所 情報技術研究部門 上席研究員 兼 メディアインタラクション研究グループ長)

2.採択者氏名

  • チーフクリエータ
    春日 貴章(香川高等専門学校 電子工学科 学生)

  • コクリエータ
    元木 浩平(香川高等専門学校 電子工学科 学生)

  • コクリエータ
    岩倉 夕希子(香川高等専門学校 情報工学科 学生)

3.採択金額

  • 1,584,000円

4.テーマ名

  • 線で創るフィールドペインター

5.関連Webサイト

  • なし

6.申請テーマ概要

近年、ロボット技術の進歩は目覚ましく、多種多様なロボットが次々と開発され、産業、介護、医療と様々な分野で活躍している。屋内での身近な問題点や不便な点がロボット技術の進歩によって改善されてきているが、屋外では直射日光の影響や足場の不安定さなどから、屋外にはまだまだ改善の余地があると思われる。そこで、屋外で行われる「ライン引き」に着目した。
学校や競技場などでは、運動会やスポーツの大会が開かれる際にライン引きといわれる石灰の白線を引く道具を使う。例えば、運動会が開催される場合、実施する種目は学校や年によって異なり、引くラインも様々である。毎回、どのようなラインを引くかを決め、運動場の大きさも考慮に入れてラインを引く。正確な直線もしくは曲線を描くためには、二人がメジャーを持ち、一人がその上にラインを引くため最低三人の人員が必要である。また、決まった角度のラインを引くためにメジャーを複数使用して、ラインを引くこともあり、とても煩雑な作業となっている。
今回、私たちはライン引きのためのロボット「フィールドペインター」を開発し、それを制御するソフトウェアを提供する。人間の代わりにロボットが自動的に線を引くことで きれいで正確な「線を創れる」ようになることが本技術の特色である。既存の手法に比べ、誰でも簡単に複雑な図形を描けるようになることに加え、人員削減などの効果が期待できる。さらに、災害時のSOSなどのメッセージ、グラウンドや競技場などをキャンバスと見立てた新しいアートの実現や巨大な広告を描くことによる広告宣伝などアミューズメント性に富んだ応用が可能である。

7.採択理由

校庭等の広範囲な地面に線を引く「ライン引き」を自動的に遂行するロボット「フィールドペインター」を実現する提案である。
従来、広範囲に正確な直線もしくは曲線を描くためには複数の人の共同作業が必要という問題があったが、それを自動制御されたロボットによって、精密かつ正確なラインを描くことで解決する。さらにこのプロジェクトが面白いのは、単に競技用に白線を引くだけでなく、複数の色で多様な図形を大きく描く点であり、「世代を超えた感動を多くの人に与えたい」という意気込みが素晴らしい。
チーフクリエータの春日君は、高専生という若い世代ならではの発想でこのテーマを着想しており、ロボットの自動制御の実現に向けて一部の機能の検証を始めているなど、既に本気で取り組み始めている点を高く評価した。ロボットのハードウェアとソフトウェアの実装を進めた上で、高い精度でカラフルな線を描くためには様々な困難が予想される。是非、コクリエータの元木君、岩倉さんと共に力を合わせて、困難を乗り越えて目的を達成して欲しい。「フィールドアートの新しい可能性」を切り拓こうというクリエータの意気込みは素晴らしく、三人の活躍が楽しみである。